薬剤師を楽しもう!

薬剤師のこだわりブログ「薬剤師を極める」

少し前の報道ですが、子供の誤飲事故で、1位がタバコから医薬品になった、という報道がされました。
自分の薬局にも、その問い合わせが来たことが最近ありました。
幸い大きな事故にはなりませんでしたが、子供連れのお母さんには、プレゼントのシールを渡しながら、
その話も少し入れようとミーティングで話し合いをしたところです。

誤飲防止の容器は、CR容器(チャイルドレジスタンス、チャイルドプルーフ)と呼ばれて、
いくつかあります。
水剤瓶のキャップを外せないようにするカバーは、押し付けて回さないと、ふたが空きません。
製品自体そういうものもいくつかありますし、
調剤して水剤を入れて渡すプラスチックボトルでもありますし、
普通のボトルに上からかぶせるタイプもあります。
同じ構造で、バラ錠の錠剤容器のふたがなっているものがあるのですが、
あれは一包化する際に使うもので、患者に渡すものではないので、変えてほしいのですが...。
輸入品で、アメリカなどではボトルのまま渡すので、そうなっているんですと言われたきりで、
外資メーカーはそんなものなんでしょうね。

 昔ながらのヒート包装も、ある意味CR容器ですね。
ハルシオンなどは意図的に出しにくくするために、ヒートシール包装のままだそうです。
歴史的には、ヒートシール包装が出しにくいからとPTP包装に変化してきたわけで、
歴史が遡るかもしれません。
 ほかには、PTP包装から、出しにくくする形のものでしょうか。
こちらをチャイルドプルーフと呼ぶそうです。品目数はまだそれほどないですが。
確かに、硬いです。一包化でバラすのに、普通に指先が痛くなりますね。
最近一部の製品は出しやすくするよう改良され始めましたが、ほとんど変わりません。
もちろん出しやすくする意味はないですので。

 他店の方に教えて頂いたのですが、PTPから錠剤を取り出しやすくする器具もありました
(トリダスというものです)。試しに購入しましたがなかなか有用です。
チャイルドプルーフ以外でも、スムーズに出せます。
ただ、気を付けないと、器具で押し出すプラスチックと包装の硬さで、
錠剤が割れてしまうことがありました。そうならないコツも何となくですが分かってきたところです。

 今のところ患者さんからのヒアリングでトリダスが必要だなと思われるケースはないですが、
いずれ誤飲事故防止が進むと紹介することになるでしょう。
 患者さん用の錠剤を潰したり、半割する器具は市販されていますから、
一つの商売機会や発明チャンスとして、こういう器具にも薬剤師が考えても面白いかもしれません。

 少し前から、薬局に関連した報道が続いていました。
薬歴未記載問題、無資格者の調剤問題に続いて、規制改革会議での医薬分業議論、
そして先週厚生労働省の大臣自ら会見してのかかりつけ薬局制度・薬局構造改革ビジョン、
という流れでしょうか。
それぞれもとても重い課題ですが、さいごの「かかりつけ薬局」に私は懐かしさを感じましたので、
その話をしたいと思います。

 かかりつけ薬局、という呼び方は、私の実感としては分業が本格的に進展しはじめ、
分業率がまだ低いころにはよく言われていた覚えはありますが、
ある程度進んでくると結局誰も言わなくなった、というイメージがあります。
現在でも面処方せんを志向するドラッグストアのチェーンは宣伝をしていますし、
薬剤師会はかかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師と言い続けている、と言われるでしょう。
たしかに、広報はされていますが、言い始めたころの本気さは私は感じません。

 これは、分業当初は地域の古くからの薬局が処方せんを呼び込むために言い始めたが、
少し時間が進んで結局効率よく利益を得るために、個人薬局も門前薬局を作り始め、
今では地域薬剤師会の運営を担っている人もほぼみな門前薬局を持っているのが実態だから、
というのは邪推でしょうか。

 県単位での分業率がまだ10%に達していない頃、基幹病院が分業するといったときに、
診療所前の門前薬局の薬剤師として説明会に参加した際、
取り仕切っている薬剤師会の方々からの自分たちに対する態度は、それは冷淡なものでした。
そんな地区を何度も経験しています。
薬剤師会側から言えば、かかりつけ薬局をやるんだから門前薬局に処方せんを奪われるのは許せん、
ということです。そういう時代でした。
今では自分の所属する薬剤師会では、実務的なことは開設者ではなく
複数のチェーン薬局(その地区だけで数店舗運営しているようなところ)の管理薬剤師同士が
協力してやっている感じです。
薬剤師会も変わったなあ、と思います。

 門前薬局でも、例えば今回問題として挙げられていた飲み残しの確認、重複投与の確認は
充分やれると思っていますし、自分のところではそれなりにやっている自負はあります。
患者から見ると相当しつこく聞いているイメージを持たれているかもしれませんが。
 結局は、繰り返し聞けるかだけだとは思います。
そうすると不思議なもので、患者から今これだけ残っていると言ってくれるようになりましたし、
それが進んで医師が理解してくれると診療所側で確認してくれるようにもなり、
疑義照会も減り、残念ですが重複投与防止加算算定の機会まで減ってきつつあるように思います。

 国が主導するかかりつけ薬局が具体的にどういうものか、は報道だけではまだよく分かりませんが、
ある程度薬局の数を絞ろうと思っているのは間違いないでしょうし、
薬局は自分たちで変われないと思われているのかもしれません。
今回のかかりつけ薬局復活は、どういう経緯か、また言い出した人がどういう人かはわかりませんが、
その背景に興味があります。

 何がよいかは、いろんな面はあると思います。ただし、ぶれてはいけないと思うのです。
それは信頼を失っていくことになると思うのです。
今回のかかりつけ薬局というフレーズが、薬剤師側にも、患者さんや世間にも、
ぶれているなぁと思われないか気になっています。

しばらく更新が滞っていました。大変失礼しました。

スポーツファーマシストの資格を取ろうと思い、昨年から今年にかけて講習を受け、やっと終了しました。
あとは正式な認定を受けるのを待つだけです。

スポーツファーマシストの認定を受けていなくても、リストは薬剤師会からも公表されていますし、
相談に対応することは、ある程度理解していれば薬剤師であればはっきり言って可能です。
また、専門認定資格とは違いますし、取得しても周りから評価を受けるものでもないように思います。
そういう思いもありながらわざわざ受講しようと思ったのは、
自分も運動するようになると、周りにいる人も応援したいし、
そのためのより確実で最新の情報を身に着けられるかな、という結構軽い動機です。

つい今しがたのニュースでも、うっかりドーピングになりかけたトップ選手のニュースが結構大きく出ていますね。

日本は、ドーピングは少ないと言われています。
理由は国民性とよく言われますが、不正な流通をしないようにさせている医療者の倫理観、もその一翼とも思います。
ただ外国でも、ドーピングするのは当たり前のこと、という風潮もあるようです。
その考えに至るのも、生活の為から、名誉を得たいという欲、などいろいろあるようです。

外国と比べたわけではないのですが、日本のスポーツ報道を見ると、
結果だけでなく、その過程がどうであったか、というのをよく見る気がします。

仕事でもそうですが、結果だけではなく過程も重要、
というのは倫理観を育て維持するためにも大切なのかもしれませんね。

スポーツでもビジネスでも、もっと言えば人生において、
他人より秀いでるというだけではなく、人柄や倫理観といった自分に軸を置いたものがないと、
本当の意味での勝者、満足感や達成感は得られないのではと思います。

4月の調剤報酬改定から約4ヶ月が経ち、新しい算定条件にも慣れてきたころと思います。
予想どおりの部分ですが、今回改定された内容で、
調剤基本料25点算定(受付2501~4000回、集中率90%以上)と、
後発医薬品調剤体制加算1(ジェネリック55%以上で18点)が算定できない影響は、
かなり大きいというのが実感でしょうか。
個店単位では、どちらも影響しないようなケースでは横ばい、微増の店舗もあるようです。
大手の調剤チェーンでは、売り上げ減を逆手にとって、「調剤基本料が安い(低い)店舗」として
堂々とポスターやのぼりで、アピールしているところも出ていますね。

さて、薬剤服用歴管理指導料の41点と、手帳なしの34点の算定状況、
実際の手帳持参率はどうでしょうか? 自分の感覚ですが、お伝えしてみようと思います。
まず、薬手帳の有無で会計に差が出るようになり、改めて手帳は不要という方も出るようになりました。
以前より不要と言っていた方含め、だいたい10~15%くらいの方が、不要といわれるかなと思います。
ただし、当初は手帳ありでよいという方が、「やっぱりいらない」と言われるようになるケースも
時々あります。
それについて、報道やネット、ツイッター等でささやかれているようなひどい言われ方は、
私はまだ直接はされたことはないですが。
例の薄い手帳で渡すようにすれば、高い店舗では90%程度、低い店舗でも80%台の41点算定は
可能という感覚でしょうか。

次に、実際に手帳を忘れずに持参してもらえる率ですが、
4,5月よりも6,7月になり明らかに下がってきたと思います。
現状では、50~60%くらいかなと思いますが、
4月以前はもっと低い店舗(30%台)も多かったでしょうから、
持参するようにと声を掛けた効果か、また薬局に薬手帳という物自体は
それなりに浸透したのかなとも思います。

今後の課題ですが、月並みではありますが持参だけではなくて、
記入内容の充実や、利用活用方法の周知がより重要とは思います。
医療機関ごとに使い分け、複数の手帳を持っている方や、
肝心のシールを一部貼っていない方なども結構いらっしゃいますね。
ただ、私が勤務している地域の近くの中核病院が、
いまだに薬手帳対応してもらえないのは、薬手帳の意義を説明するのにとても困るものです。

また、電子化されたお薬手帳もいろいろ試行が始まっていますから、
使い勝手のみならずセキュリティも含め、取り組むことは必須になるのでしょうか。
個人的な体験から言うと、医療で電子化というのは表面上は進むが、
(患者側にとって意味のある)活用、利用、便利化は、利害が絡んで進まないという印象はありますが。
そういう点にも薬剤師の知恵が生かせないのかなと思います。

今回の調剤報酬で、お薬手帳を持参されなかった方には、
薬剤服用歴管理指導料は41点から34点(7点減)で算定することになりました。
それに関連してなんだかすっきりしない、モヤモヤするような話がありましたので、ここに紹介します。

まず、お薬手帳持参がなく34点算定した方へ、手帳用のシールだけの交付は止めたほうがよい、
という話がありました(まったくお薬手帳不要だという方にはシールも渡していませんが)。
確かに「シールだけ渡した場合には34点」とはありますが、
シールを渡さなければならないとは書かれていません。
シールだけを渡すとよくない理由として、
「手帳は提示せずにシールだけもらって手帳に貼って、値段を安くする」
「手帳をしっかり持ってくる人に不公平感が生じる」ということのようです。

それって、たまたまお薬手帳を忘れた人が、次回来局までにほかの医療機関に行く場合には困るのでは?


手帳を持ってこない人に簡易型の薬手帳を渡して41点を算定する、というのは
患者で診療報酬のことが少しわかる方ならモヤモヤするところ(というか怒られる話)だと思います。
この話は、今回の調剤報酬改定の内容が公表されて以降、ずっと続いている話です。
自分の薬局ではそのような形はしていなかったのですが・・・

確かに厚労省のQ&Aにおいても、「手帳とは言えないもので渡すと34点」
「持参忘れに対して新しい手帳を交付した場合には41点算定できる」ということがあります。
じゃあ、薄くない通常の手帳を渡せばよい、と。
お薬手帳を持ってくるのが2回に1回位の患者(結構いらっしゃいます)に、
忘れる度新しいお薬手帳を渡せばよいのでしょうか?
後で整理して1冊にまとめれば、それでよいものなのでしょうか?


新規手帳で41点算定できるという説明がわざわざあるのは、
(上記のような)シールだけ受け取るという不正?への対応、
手帳を忘れたとしても他の医療機関で併用薬をチェックできるようにするため、なのだと。
だから手帳を忘れた人に対しても、41点算定できるよう薬局は取り組むべきだと。

そう言い切られればそうなのかもしれませんが・・・
お薬手帳の持参率を上げ、41点を算定できるよう努力することは、当然でしょう。
どうやって持ってきてもらうか、そしてどうお薬手帳の重要性や利便性をアピール・理解してもらうか
への努力は分かるのですが。
モヤモヤしているのは私だけでしょうか。
この話は患者側、一般消費者側からはどう見えているのでしょう?

新入社員も社会人となって1か月が過ぎようとしています。
現在の薬学卒の新入社員は、6年卒で以前より2歳年上ということか、
実習でそれなりに現場の経験があるからか、薬剤師となって仕事をする、ということに
以前ほどは新鮮さを感じていないかな、という印象があります。

 自分も新入社員だったことが当然あるわけですが、
私のキャリアは十数年前のドラッグストアへの就職から始まっています。
今頃の時期はひたすらお店の掃除(床掃除、商品棚の水拭き)、品出し(商品を並べること)、
あと何か探していそうなお客さんに気が付き次第声をかけていた、
その繰り返しという記憶があります。
まず1か月間は掃除と、接客・相談販売を実地で覚えろということだったのでしょうか。
 国家試験のために勉強したことなど、社会人3日目にはほとんど忘れていました。
(ちなみに当時の薬剤師国家試験は、3月末の土日でした。現在より2週間ほど後だと思います)

 接客はともかく、ずっと掃除していろと新入社員に指示したら、
今では「パワハラ」と言われるかもしれませんね。

 たまたま学生時代の病院実習で一緒になった人(出身大学は違います)と、
偶然ですが同じドラッグストアに入社していました。
その彼はちょうど今頃、病院に就職した友人と会ったときに、
自分は薬剤師としての知識が何もついていないことに愕然としたそうです。
ふと私の配属された店を訪ねてきて、「俺は転職するよ」と、言われたのを思い出します。

 転職した彼と、しなかった自分。良かったのか悪かったのか分かりません。

 また、新入社員の時の上司、店長のことも思い出します。
私自身は、いろんな経験を積ませてもらえたのでよかったと今では思っていますが、
当時の同僚は、また違った感想を持っていたそうです。

 社会人生活を過ごすうちに、いろんな職場や上司と巡り合うことになると思います。
当たり前ですが、最初の職場、最初の上司は、新入社員の時だけです。
 まだ新入社員の時では理解できない、気が付かなくても、
後から良い意味で思い出せてもらえる、
薬局長としてまずはそういう店舗・上司であればと思っています。

先回に続いて、今回の調剤報酬改定についての感想を挙げてみたいと思います。

●薬剤服用歴管理指導料
 薬手帳不要の方には34点を算定することになりましたが、
またそのうちテレビで「調剤薬局で値段を安くする方法」とか言って報道されるのだろうなぁと,
どうしても思ってしまいますよね。

 たとえ今は他に併用薬が無くても、相互作用の可能性はありうるので、
薬手帳は重要だと私は思いますし、そのようにお伝えしています。
ただ、全員の納得は難しいのも実感しています。
カラー薬情をしっかりファイリングして持ち歩いている方に、手帳を勧めるのは限度があります。

 もう一つ問題は、医療機関で薬手帳(シール)は義務化されていません。
院内処方においては、薬剤情報提供料10点に手帳記載加算として+3点算定できる形です
(今回の診療報酬改定でも、私が見た範囲ではそのままと思います)。

 薬手帳のシールは、分業していない大病院が発行していないケースが(それなりに)あります。
十数種類も薬飲んでいるがそっちはシールくれないんだよね~、となるので困ったものです。
というか、私のいる店舗ではけっこう切実な問題です。
 もちろんルール上は「薬局側が患者に確認し、分かり次第記載するべき」なのですが。
しかし医薬品名が分かるものを持って来られないことも多く、その場での対応は限界があります。


●主治医機能評価(地域包括診療料)
 調剤報酬だけを見ていると気が付きませんが、薬事系の報道ではよく出ましたので、
興味のある方ならご存知だと思います。

 高血圧、糖尿病、脂質異常症、認知症のうち2つ以上を有する患者に対して、
主治医として治療することで算定できるというもので、
当初は200床未満の病院では、「院内処方に限る」とされました。
 かけた梯子を外すのが厚労省ですが、
いよいよ医薬分業自体の梯子も外すならぬ壊しにかかったという感想を持ったものです。
 薬の管理も含め主治医がすべて行う「べき」というなら、世界(先進国欧米中心ですが)で行われている
医薬分業の意義は、いったいどこにあるのでしょうか!

 最終的には「24時間開局薬局」であれば院外処方可能となりましたが、
4つの疾病は特段急変や救急受診が必要とも思えないのですが...。何か将来のための布石なのでしょう
(たとえば救急病院の負担を減らすために、軽度急変疾患を24時間診させるのを義務化など)。

 病院は、門前薬局に24時間開局を求めるか、該当患者を院内処方せんにすることになります。
薬局としては、該当患者だけ院内処方にしてほしいとなりますが、それで収まるかどうか...。
 主治医制度に該当するような患者をねらっている小規模な病院では、
院内調剤のための薬剤師確保も必要になり、またさらにそのための利益確保として薬価差益の確保、
ひいては処方せんの発行自体をやめて院内調剤になる、ということも起きるのではないでしょうか。
そうなれば、そこの門前薬局は営業を続ける価値があるかどうかの経営判断を迫られます。

 24時間開局、もしくは対応は、確かに在宅医療を真剣にやるなら必要だ、等々
前向きにとらえるべき部分もあるとは思います。
 24時間「営業」に限って言わせてもらえば、過剰となったとなった薬剤師の受け皿作り
というわけではないでしょうから、「コンビニ受診をやめよう」「医療資源の有効活用」など
よく言われることと逆行しているようにも思います。


 今までの診療報酬の改定は、医療者側と政府など財政側、それに保険者(患者)側での綱引きが、
あくまでメインでした。少子高齢化という国全体の力が減少していく時代にあっては、
限られたパイの奪い合いが苛烈になるという現象が起きるはずです。
 今回の改定は「分業バッシング改定」とも言われているように、限られたパイを奪い合うために、
より良い医療の姿どころではなく、医師側と足を引っ張り合う?という、
悲しい実現の始まり、というのが私のまとめた感想になります。

 しかしそうなったもとをただせば、医薬分業によってダブルチェックをする、無駄な薬の使用を減らす、
などなど分業開始当初言われた分かりやすいメリットを、患者側にも政府などの体制側にも示せなかった薬剤師側が、
そのツケを払う時が来た、ということにもなるのでしょう。

 薬剤師という資格、薬局やドラッグストアなどの店舗や会社も、
「淘汰」の時代が現実になったと感じています。いよいよ始まったな、と。
 しかし私は、その淘汰を乗り越えた薬剤師、薬局は、
真に患者や医師、社会から信頼された形で続いている、と信じたいと思います。


今年4月からの調剤報酬改定の内容が明らかになってきました。
自分の店舗での影響など、試算されましたでしょうか?

調剤報酬の改定では、毎回何らかの「こんなことをするの?」ということが入りますね。
そのような内容が今回はいくつかあるように思います。
ただそれだけではなくて、今回は経営や薬局の存続に関わるかも、という
薬局には重い内容ではないかと思います。


●後発医薬品調剤体制加算
公表されている資料から読み解くと、後発品の使用比率旧指標で30%(15点取れる目安)は、
全体の半分くらいの薬局でした。
今までは半分くらいの薬局は、15点取れる可能性があったということです。

今回の改定で18点が取れる目安の新指標使用比率55%は
、薬局全体の(後発品使用比率の高い薬局の上位からから)30%程度と思われます。
ちなみにこれは、旧指標の35%19点が取れる目安と変わらないくらいです。
  ・15点取れていた薬局のほとんどが0点になる 
   →  処方せん1枚で150円の減収! かなり厳しい...
  ・19点取れていた薬局でも、18点の算定がぎりぎりくらいの可能性がある。
   19点を算定できる可能性があるのは全体の30%
   →  油断すると、すぐに190円の減収!
     大型商品のジェネリック発売時には、患者さんに声がかけられまくることでしょう...

ちなみに、新指標での使用比率65%(22点取れる目安)は、
薬局全体の(後発品使用比率の高い薬局の上位からから)10%程度と思われます。
梯子をかけて外すのは厚労省の毎度のことですが、
いよいよ本格的に外しにかかっていますね。
ジェネリックは諦めて、先発医薬品で薬価差を稼ぎにいく
チェーン薬局も出てくるのではと考えてしまいます。


●調剤基本料の特例
受付回数2500回超(集中率90%超)で、
(現状40点、改定後41点から)25点の減点対象になります。
受付2500回ですが、月20日の営業で125枚/日 ですから、
少し忙しい店舗ならすぐに超えてしまいます。
またその対象薬局は基準調剤加算1(現状10点、改定後12点)も算定できなくなります。

その減点特例のさらに対象外となる(41点算定できる)方法として
「24時間開局」との条件ができました。
現状の解釈では、どうやら24時間薬局に薬剤師がいないといけないようです。
コンビニのように電気を煌々と灯すか、
少なくともインターホン押せばすぐ薬局を開けられるということが必要なのでしょう...
そんなにニーズがあるとも思えず、エコでないなぁという感想を第一に私は持ちましたが、
皆さんはどう思われますか。

 また、医薬品の納価交渉で、妥結率が低いと調剤基本料が19点になるということも設けられました。
調剤基本料の減点規定はありましたが、調剤報酬において、
努力すれば算定できるというものがほとんどで、罰則的に減点が導入されるという意味で
トピックのように思います。
今後はジェネリックの調剤比率が低いと、調剤基本料が下げられるといったような時代が来るのでしょうね。


●簡単に試算
受付回数2500回/月の薬局として、
後発医薬品調剤体制加算15点、調剤基本料15点、基準調剤加算10点 それぞれ減点
15+15+10=40点=400円, ×2500 = 100万円/月 !の減収です。

さらに、薬価改定に伴う差益の減少(早期妥結の影響もあり)、消費増税による経費増... 

100万円分元を取るには、薬剤師の人件費に手を出さざるを得ないでしょう。
人員配置が相当厳しくなるでしょうし、いわゆる「できない薬剤師」を雇っている余裕はなさそうです。
そういう意味でも薬剤師過剰時代が一気に始まりそうです。

さらに、自分の雇用だけの問題だけでなく、所属する会社組織自体の存亡にかかわるかもしれません。
試算のような規模の薬局は、チェーン薬局におけるドル箱店舗であることが多いです。
他の店の赤字を何とかドル箱店舗の利益でカバーしているようなところでは、
一気に赤字の可能性が見えてくるのではないでしょうか。

あるいは、それだけ利益が出る予定で、土地建物の賃借料が高いことを承知で出店した薬局も
少なからずあるでしょう。
今まで何とか収支がトントンだったのが、これを契機に一気に赤字店舗、
となってしまうところもあるでしょう。
数店舗規模のチェーン薬局では、薬局の身売りや廃業も、あり得ない話ではないでしょう。

薬局業界には、アベノミクスやらベースアップなどどこの世界の話ということでしょうか。
いよいよ、本当の冬の時代が始まったのかもしれません。

ご無沙汰してしまい、大変失礼しました。
前回に引き続いて、調剤薬局での営業数値に関するお話です。
今回は私が薬局長として意識している内容を記載してみようと思います。

まず、営業数値を見る意味は、2つあると思います
1つは「そのお店の変化」です。改善しているか、悪化しているか、努力しているか。
絶対評価ともいうのでしょうか。
もう1つは、「ほかの店と比べてどうか」です。
他店と比べて問題点はないか、良い点は他店に波及できないか、相対評価に用います。
今回説明する数値は、それぞれに使う数値が混ざっています。


① 集中率
  = 門前医療機関の処方せん枚数 / 全処方せん枚数 (受付回数でもOK)
これはその店の努力指標にもなります。
環境により、単純に他店とは比較できないものではありますが。
門前の医療機関以外、ほかの医療機関から処方せんが来ているか?

これからの薬局は、ただ儲かればよいだけではなく、
地域や近所の方々に受け入れてもらうことは必須と思っています。
他の処方せんを受けると、在庫が増えたり営業時間が長くなったり・・・
と考えてしまうかもしれませんが、今までのように「楽して儲けれればよい」という薬局は、
その姿勢により淘汰されてしまうのではないでしょうか。


② 処方せん1枚単価(受付1回単価)
これは「客単価」として前回すでに出てきた数字ですが、
単価が高ければ「処方が重たい、薬が多い」傾向があります。
例えば眼科の門前であれば4000円前後、皮膚科や小児科、整形外科も単価は低めです。
市民病院など広域医療機関や複数の科を受診するような医療機関の門前は、
薬剤の種類も多く、処方日数も長く、さらに一包化など複雑な処方が増えますので、
単価は高くなります。例えば受付1回の単価で2万円を超えるようなところもありますね。

これは他店と比較する場合に、売上高や処方せんの枚数だけで単純に比較はできませんので、
例えば従業員が多すぎないか、少なすぎていないかを判断するのには必要な数値です。
ただし、1枚単価を見なくても、粗利率でも処方せんの重さは推測できます
(1枚単価が上がると、粗利率は下がる)。
粗利率が低い店舗は、技術料や薬学管理料が相対的に低い、
すなわち使用薬剤(額)が多い傾向はあります。


③ 商品回転率
  = 売上高/在庫高
この数値は、実際に会社の経営指標としても使われています。
無駄な在庫が多ければ、仕入れた医薬品の支払いで会社の経営は苦しくなります。
計算式として、売上高の期間を1年、または1か月で見る、
また在庫高は仕入れ値で計算する、売価(薬価)で計算するなど、
数字の設定方法はいろいろありますが、自店あるいは自社の数字としてみるなら、
統一しておけばどちらでも問題はないです。
例えば、月間売上高1000万円で、在庫が500万円だとすると、
1000/500=月間2回転、年間では2×12=24回転、となります。

タイプが異なる店舗を、この数値で単純に比較はできません。
新店など売上高が少ない薬局は低くなりますし、
極端な例では面処方だけの薬局ではどうしても在庫が増えてしまうでしょう。
売り上げが大きい店舗は、少々在庫が多かろうが、採用薬品数が多くても回転率はよい傾向があります。

自分の中では、中規模(月商1000万、月間処方せん1000枚くらいが目安でしょうか)の
門前薬局であれば、年12回転はほしいところと思います。
同じ規模でも採用薬剤が少ない店舗では、20回転近くはいくでしょう。

薬局長としてこの数値を意識するのは、もう1つ理由があります。
商品回転率の目標を決めておくと、店舗の適正在庫の目安が見えてくるのです。
例えば年12回転、月1回転を目標にすると、
店舗の在庫は1か月の売上高相当額まではよい、と考えられます。使用薬品の量にして、1か月分です。
まれにしか使われない医薬品や、数か月に1度来る患者さん用で一度に大量に使われるなどの理由で
1か月分以上在庫しておかなければいけないものも当然ありますが、
逆によく処方される医薬品は、1か月分なくても足りるでしょう。
そう考えていくと、よく使われる医薬品は2週間分(半月分)、
もしくは1週間分(月間使用量の1/4位)を目安にして、
もう少し使用量が少ない医薬品は1か月分位、
他の薬剤は使用頻度や1回の使用量に応じて在庫量を調整する、
と考えるとわかりやすいのではと思います。

薬剤師の経歴はいろいろありますが、在庫の適正量の考え方が分からない、という方は
時々見かけるように思います。
このような考え方を、参考にされてはいかがでしょうか。

私はある薬局の薬局長をしていますが、調剤薬局でも責任者に
営業の数値管理をさせる会社組織もあると思います。
今私が勤めている会社はそのような指示はないのですが、今までの習慣からか、
今自店の営業数値がどういう状況か気になります。
医療人は商売人ではないのだから、そういうことはけしからんという考え方もあるとは思いますが、
例えば理想のためなら自らが属する組織が生き残れないような損失を出しても構わない、
わけではないはずです。
そのためにも、マネージャー(管理者)には、最低限の数値管理と、
そのための知識は必要と私は思っています。
例を挙げながらそのあたりの話をしてみようと思います。


今回は「売上」「粗利」を中心に説明してみます。

まず「売上」ですが、一般社会では「売上を伸ばせる営業マン」が出世することも多いでしょう、
身近ではMRさんでしょうか。今回は調剤薬局で売り上げを伸ばすための話まではしませんが。
調剤専門の薬局であれば、処方せんに依るものが売上のほぼすべて、でしょう。

 売上=調剤報酬=一部負担金+基金等のレセプト入金
   =調剤技術料(調剤基本料+調剤料)+薬学管理料+薬剤料(+特定保険医療材料料)

が一般的でしょうか。レセプトを意識している方ならお分かりと思います。
売上の式としては、ほかにもあります。

 売上=客数(患者数、処方せん数)×客単価(平均処方せん点数)

でもあります、ドラッグストアやコンビニなど小売業でよく使われる式です。
売上は、客数を増やすか、お客さんが一度に高く買ってくれる
(たくさん買う、高額商品を買ってくれる)ようにすれば増えるという考え方です。

 例:1か月売上1000万円、処方せん数1000人の調剤薬局にて
    調剤報酬1000万円=一部負担金150万円+入金850万円
            =技術料&管理料250万円+薬剤料750万円
            =客数1000人×処方せん1枚単価1万円

だいたいこれくらいの数字になると思います。
一部負担金は現金ですぐに手元に入りますが、入金は約2か月後となるので、
資金繰りを考えるとなかなk厳しいものです。


次に「粗利」ですが、この言葉を聞いたことがない方もお見えと思います。
別の言葉として粗利益、荒利、売上総利益とも呼ばれますが、要は「もうけ」です。
売上から売上原価(調剤においては使った医薬品の仕入れ値)を引いた額です。
また、売上÷粗利 を%で表し、粗利率と言います。

 粗利=売上-使用医薬品額=売上-薬剤料×(1-薬価差益率)
   =調剤技術料+薬学管理料+薬価差益

最後の式を見るとわかりますが、薬価差益はそのまま足し算になります。
これは未分業の医療機関でも同じことで、医科での算定努力は行ったうえに、
仕入れ値交渉をすればそのまま利益として上乗せできるのです。

   例:1か月売上1000万円、薬価差益10%の調剤薬局にて
    粗利=売上1000万―薬剤料750万×90%
      =技術料&管理料250万円+750万×10%
      =325万 粗利率32.5%
    これが薬価差益15%になると...
       250万+750万×15%=362.5万 

1か月あたりで 37.5万円も薬局の儲けが増えます。
若い薬剤師の1人分の人件費くらいありますね!


上の式では、おおざっぱな粗利や1か月程度の短期間の粗利を見るのには便利ですが、
実際の粗利の計算は正確な「使用医薬品額」を見なければいけません。
使った医薬品を正確に知るために、正確な「在庫額」が必要になります。
そのために最低年2回「棚卸」が行われます。

正確な粗利は、

 粗利=売上-使用医薬品額=売上-(期首在庫+期間仕入額-期末在庫)

 となります。会社などの「決算」で用いられる粗利はこの計算になります。

ここでの問題は、「ロス」です。
散剤の秤量誤差など仕方ない場合もあると思いますが、
期限切れや門前病院の従業員用の薬として譲る、さらには原因不明など、
薬局によっては売り上げの2%近くもあるようです。
これらロスは自らの給与を減らしているともいえます。

   例:1か月売上1000万円、期首在庫額500万円、期間仕入額675万円、
     期末在庫額500万円
  粗利=1000万-(500+675-500)万=325万(薬価差益10%と同じ結果です)


  しかし、廃棄医薬品が20万円あり、期末在庫が480万とすると、
  1000万-(500+675-480)万=305万 

当たり前ですが、廃棄した医薬品額分、そのまま利益が減りました。
引き取り手もない期限切れで廃棄ならば仕方がない、と言えるかもしれません。
しかしこれが原因不明、もしくは従業員が勝手に持ち出してとなると、
そうですかで済む話ではありません。

会社単位で考えれば、期末在庫を増やす(見せかける)とその時は粗利が増えて見えますが、
それは粉飾決算の手口でもあります。
ただし実際に期末に大量購入して粗利をよくしたとしても、
結局購入分のお金を支払わねばならず、もし支払いできなければ「倒産」です。
逆に期末在庫を少なく見せかけると、粗利が減ります。
儲けが減れば、法人税という会社の儲けに対してかかる税金が減るので、脱税の手口でもあります。

店単位では、棚卸は店舗の利益を確定させるのにとても大切な作業になります。
期末在庫を間違えると、次の期首在庫も正しくない為、
次の期間の利益も正しく出せないことになります。
自分たちの仕事の利益が正しく計算できなければ、
自らの給与額や賞与額の根拠も怪しくなってしまいます。

今回は売上と利益の単純な話をかなり細かくしましたが、
今回例に出した数値を使って、次回は調剤薬局でもできる、
薬局長管理指標を挙げてみようと思います