薬剤師を楽しもう!

調剤薬局での数値管理(2)

ご無沙汰してしまい、大変失礼しました。
前回に引き続いて、調剤薬局での営業数値に関するお話です。
今回は私が薬局長として意識している内容を記載してみようと思います。

まず、営業数値を見る意味は、2つあると思います
1つは「そのお店の変化」です。改善しているか、悪化しているか、努力しているか。
絶対評価ともいうのでしょうか。
もう1つは、「ほかの店と比べてどうか」です。
他店と比べて問題点はないか、良い点は他店に波及できないか、相対評価に用います。
今回説明する数値は、それぞれに使う数値が混ざっています。


① 集中率
  = 門前医療機関の処方せん枚数 / 全処方せん枚数 (受付回数でもOK)
これはその店の努力指標にもなります。
環境により、単純に他店とは比較できないものではありますが。
門前の医療機関以外、ほかの医療機関から処方せんが来ているか?

これからの薬局は、ただ儲かればよいだけではなく、
地域や近所の方々に受け入れてもらうことは必須と思っています。
他の処方せんを受けると、在庫が増えたり営業時間が長くなったり・・・
と考えてしまうかもしれませんが、今までのように「楽して儲けれればよい」という薬局は、
その姿勢により淘汰されてしまうのではないでしょうか。


② 処方せん1枚単価(受付1回単価)
これは「客単価」として前回すでに出てきた数字ですが、
単価が高ければ「処方が重たい、薬が多い」傾向があります。
例えば眼科の門前であれば4000円前後、皮膚科や小児科、整形外科も単価は低めです。
市民病院など広域医療機関や複数の科を受診するような医療機関の門前は、
薬剤の種類も多く、処方日数も長く、さらに一包化など複雑な処方が増えますので、
単価は高くなります。例えば受付1回の単価で2万円を超えるようなところもありますね。

これは他店と比較する場合に、売上高や処方せんの枚数だけで単純に比較はできませんので、
例えば従業員が多すぎないか、少なすぎていないかを判断するのには必要な数値です。
ただし、1枚単価を見なくても、粗利率でも処方せんの重さは推測できます
(1枚単価が上がると、粗利率は下がる)。
粗利率が低い店舗は、技術料や薬学管理料が相対的に低い、
すなわち使用薬剤(額)が多い傾向はあります。


③ 商品回転率
  = 売上高/在庫高
この数値は、実際に会社の経営指標としても使われています。
無駄な在庫が多ければ、仕入れた医薬品の支払いで会社の経営は苦しくなります。
計算式として、売上高の期間を1年、または1か月で見る、
また在庫高は仕入れ値で計算する、売価(薬価)で計算するなど、
数字の設定方法はいろいろありますが、自店あるいは自社の数字としてみるなら、
統一しておけばどちらでも問題はないです。
例えば、月間売上高1000万円で、在庫が500万円だとすると、
1000/500=月間2回転、年間では2×12=24回転、となります。

タイプが異なる店舗を、この数値で単純に比較はできません。
新店など売上高が少ない薬局は低くなりますし、
極端な例では面処方だけの薬局ではどうしても在庫が増えてしまうでしょう。
売り上げが大きい店舗は、少々在庫が多かろうが、採用薬品数が多くても回転率はよい傾向があります。

自分の中では、中規模(月商1000万、月間処方せん1000枚くらいが目安でしょうか)の
門前薬局であれば、年12回転はほしいところと思います。
同じ規模でも採用薬剤が少ない店舗では、20回転近くはいくでしょう。

薬局長としてこの数値を意識するのは、もう1つ理由があります。
商品回転率の目標を決めておくと、店舗の適正在庫の目安が見えてくるのです。
例えば年12回転、月1回転を目標にすると、
店舗の在庫は1か月の売上高相当額まではよい、と考えられます。使用薬品の量にして、1か月分です。
まれにしか使われない医薬品や、数か月に1度来る患者さん用で一度に大量に使われるなどの理由で
1か月分以上在庫しておかなければいけないものも当然ありますが、
逆によく処方される医薬品は、1か月分なくても足りるでしょう。
そう考えていくと、よく使われる医薬品は2週間分(半月分)、
もしくは1週間分(月間使用量の1/4位)を目安にして、
もう少し使用量が少ない医薬品は1か月分位、
他の薬剤は使用頻度や1回の使用量に応じて在庫量を調整する、
と考えるとわかりやすいのではと思います。

薬剤師の経歴はいろいろありますが、在庫の適正量の考え方が分からない、という方は
時々見かけるように思います。
このような考え方を、参考にされてはいかがでしょうか。

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