薬剤師を楽しもう!

H26年 調剤報酬改定のインパクト(2)

先回に続いて、今回の調剤報酬改定についての感想を挙げてみたいと思います。

●薬剤服用歴管理指導料
 薬手帳不要の方には34点を算定することになりましたが、
またそのうちテレビで「調剤薬局で値段を安くする方法」とか言って報道されるのだろうなぁと,
どうしても思ってしまいますよね。

 たとえ今は他に併用薬が無くても、相互作用の可能性はありうるので、
薬手帳は重要だと私は思いますし、そのようにお伝えしています。
ただ、全員の納得は難しいのも実感しています。
カラー薬情をしっかりファイリングして持ち歩いている方に、手帳を勧めるのは限度があります。

 もう一つ問題は、医療機関で薬手帳(シール)は義務化されていません。
院内処方においては、薬剤情報提供料10点に手帳記載加算として+3点算定できる形です
(今回の診療報酬改定でも、私が見た範囲ではそのままと思います)。

 薬手帳のシールは、分業していない大病院が発行していないケースが(それなりに)あります。
十数種類も薬飲んでいるがそっちはシールくれないんだよね~、となるので困ったものです。
というか、私のいる店舗ではけっこう切実な問題です。
 もちろんルール上は「薬局側が患者に確認し、分かり次第記載するべき」なのですが。
しかし医薬品名が分かるものを持って来られないことも多く、その場での対応は限界があります。


●主治医機能評価(地域包括診療料)
 調剤報酬だけを見ていると気が付きませんが、薬事系の報道ではよく出ましたので、
興味のある方ならご存知だと思います。

 高血圧、糖尿病、脂質異常症、認知症のうち2つ以上を有する患者に対して、
主治医として治療することで算定できるというもので、
当初は200床未満の病院では、「院内処方に限る」とされました。
 かけた梯子を外すのが厚労省ですが、
いよいよ医薬分業自体の梯子も外すならぬ壊しにかかったという感想を持ったものです。
 薬の管理も含め主治医がすべて行う「べき」というなら、世界(先進国欧米中心ですが)で行われている
医薬分業の意義は、いったいどこにあるのでしょうか!

 最終的には「24時間開局薬局」であれば院外処方可能となりましたが、
4つの疾病は特段急変や救急受診が必要とも思えないのですが...。何か将来のための布石なのでしょう
(たとえば救急病院の負担を減らすために、軽度急変疾患を24時間診させるのを義務化など)。

 病院は、門前薬局に24時間開局を求めるか、該当患者を院内処方せんにすることになります。
薬局としては、該当患者だけ院内処方にしてほしいとなりますが、それで収まるかどうか...。
 主治医制度に該当するような患者をねらっている小規模な病院では、
院内調剤のための薬剤師確保も必要になり、またさらにそのための利益確保として薬価差益の確保、
ひいては処方せんの発行自体をやめて院内調剤になる、ということも起きるのではないでしょうか。
そうなれば、そこの門前薬局は営業を続ける価値があるかどうかの経営判断を迫られます。

 24時間開局、もしくは対応は、確かに在宅医療を真剣にやるなら必要だ、等々
前向きにとらえるべき部分もあるとは思います。
 24時間「営業」に限って言わせてもらえば、過剰となったとなった薬剤師の受け皿作り
というわけではないでしょうから、「コンビニ受診をやめよう」「医療資源の有効活用」など
よく言われることと逆行しているようにも思います。


 今までの診療報酬の改定は、医療者側と政府など財政側、それに保険者(患者)側での綱引きが、
あくまでメインでした。少子高齢化という国全体の力が減少していく時代にあっては、
限られたパイの奪い合いが苛烈になるという現象が起きるはずです。
 今回の改定は「分業バッシング改定」とも言われているように、限られたパイを奪い合うために、
より良い医療の姿どころではなく、医師側と足を引っ張り合う?という、
悲しい実現の始まり、というのが私のまとめた感想になります。

 しかしそうなったもとをただせば、医薬分業によってダブルチェックをする、無駄な薬の使用を減らす、
などなど分業開始当初言われた分かりやすいメリットを、患者側にも政府などの体制側にも示せなかった薬剤師側が、
そのツケを払う時が来た、ということにもなるのでしょう。

 薬剤師という資格、薬局やドラッグストアなどの店舗や会社も、
「淘汰」の時代が現実になったと感じています。いよいよ始まったな、と。
 しかし私は、その淘汰を乗り越えた薬剤師、薬局は、
真に患者や医師、社会から信頼された形で続いている、と信じたいと思います。


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