薬剤師を楽しもう!

ふたたびのかかりつけ薬局

 少し前から、薬局に関連した報道が続いていました。
薬歴未記載問題、無資格者の調剤問題に続いて、規制改革会議での医薬分業議論、
そして先週厚生労働省の大臣自ら会見してのかかりつけ薬局制度・薬局構造改革ビジョン、
という流れでしょうか。
それぞれもとても重い課題ですが、さいごの「かかりつけ薬局」に私は懐かしさを感じましたので、
その話をしたいと思います。

 かかりつけ薬局、という呼び方は、私の実感としては分業が本格的に進展しはじめ、
分業率がまだ低いころにはよく言われていた覚えはありますが、
ある程度進んでくると結局誰も言わなくなった、というイメージがあります。
現在でも面処方せんを志向するドラッグストアのチェーンは宣伝をしていますし、
薬剤師会はかかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師と言い続けている、と言われるでしょう。
たしかに、広報はされていますが、言い始めたころの本気さは私は感じません。

 これは、分業当初は地域の古くからの薬局が処方せんを呼び込むために言い始めたが、
少し時間が進んで結局効率よく利益を得るために、個人薬局も門前薬局を作り始め、
今では地域薬剤師会の運営を担っている人もほぼみな門前薬局を持っているのが実態だから、
というのは邪推でしょうか。

 県単位での分業率がまだ10%に達していない頃、基幹病院が分業するといったときに、
診療所前の門前薬局の薬剤師として説明会に参加した際、
取り仕切っている薬剤師会の方々からの自分たちに対する態度は、それは冷淡なものでした。
そんな地区を何度も経験しています。
薬剤師会側から言えば、かかりつけ薬局をやるんだから門前薬局に処方せんを奪われるのは許せん、
ということです。そういう時代でした。
今では自分の所属する薬剤師会では、実務的なことは開設者ではなく
複数のチェーン薬局(その地区だけで数店舗運営しているようなところ)の管理薬剤師同士が
協力してやっている感じです。
薬剤師会も変わったなあ、と思います。

 門前薬局でも、例えば今回問題として挙げられていた飲み残しの確認、重複投与の確認は
充分やれると思っていますし、自分のところではそれなりにやっている自負はあります。
患者から見ると相当しつこく聞いているイメージを持たれているかもしれませんが。
 結局は、繰り返し聞けるかだけだとは思います。
そうすると不思議なもので、患者から今これだけ残っていると言ってくれるようになりましたし、
それが進んで医師が理解してくれると診療所側で確認してくれるようにもなり、
疑義照会も減り、残念ですが重複投与防止加算算定の機会まで減ってきつつあるように思います。

 国が主導するかかりつけ薬局が具体的にどういうものか、は報道だけではまだよく分かりませんが、
ある程度薬局の数を絞ろうと思っているのは間違いないでしょうし、
薬局は自分たちで変われないと思われているのかもしれません。
今回のかかりつけ薬局復活は、どういう経緯か、また言い出した人がどういう人かはわかりませんが、
その背景に興味があります。

 何がよいかは、いろんな面はあると思います。ただし、ぶれてはいけないと思うのです。
それは信頼を失っていくことになると思うのです。
今回のかかりつけ薬局というフレーズが、薬剤師側にも、患者さんや世間にも、
ぶれているなぁと思われないか気になっています。

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