薬剤師を楽しもう!

薬剤師達が嘆く、「これでいいのか薬剤師!」

 このところ朝日新聞は保険薬局にターゲットを絞ったかのような報道が続いております。
しかしながら、5月11日のスクープは衝撃的でした。 
4月に神戸市北区で薬剤師ではない薬局経営者が調剤を行い、営業停止処分を受けた、
と言う事件がありましたが、この時には薬剤師のBBSでは「バカな事をやって」
「ばれないと思ったのかな」と言う、どちらかと言うと摘発されて当然であるという
否定的な意見が多く、あくまでも特異なケースで、こんなことが記事になると
キチンとやっている自分たちが迷惑!と言った雰囲気でした。
しかし今回のファーマライズ社の記事に対しては、もちろん「一部の人がやった事だ」と
言うコメントもありますが、「朝日新聞は偏向報道だ!」「軟膏の混合や水薬の調整は
駄目だけど、ピッキングはOKでは?」「機械はOKで人がやっては駄目なのは矛盾している!」
「病院では普通に調剤助手がやっている」「クリニックでは事務員が普通に混合も水薬の調整も、
服薬指導もしている!」さらには「薬剤師が鑑査する分、院内処方のクリニックよりは
安全(マシ)ではないか?」と言う「えっ、そこに話が行くの?」と言うコメントが散見されます。
背後に何か意思が働いているのでは?と勘繰りたくなるほど、このところ保険薬局に対する
バッシングが続いているので、それに対する鬱憤もあるのかと思いますが、余り言い訳めいた
コメントが多いと、「これってもしかして氷山の一角?」と考えてしまいます。
何よりも一般の方々はそう思うのではないでしょうか?すなわち、ほとんどの薬局が
同じことをやっているから、あわてて正当化しているのでは?と、勘繰られてしまうのでは
ないでしょうか? 不正を指摘されているのですから、当事者はまず謝罪し、防止策を策定し、
それに沿って改善していく。 そして周囲の薬剤師は、どうすれば不正をせずに業務をきちんと
行えるかをアドバイスすることが必要(正常)では?と思います。 

現在の制度が正当だとは思いませんし、矛盾もあるかと思います。
グレーゾーンと言うものはどこにも存在しています。 
ただ、保険薬局で行われているのは、医療保険を利用した保険調剤です。
単なる商取引ではないので、少しの瑕疵をヒステリックに報道されるのは仕方ないと思いますし、
やり玉に挙げられたとしたら、挙げられるだけの理由(儲かりすぎている?)が
あるのではないでしょうか。不正(無資格者の調剤)をしなくても、薬剤師だけできちんと
調剤業務ができる事を宣言し、粛々と努力していくのか、計数調剤を行う調剤助手がいなければ
業務ができないので、正式のその存在を認めてもらう方向にすすむのか、
今回の摘発は薬剤師業務の進路を、薬剤師が自ら決断する良いきっかけではないでしょうか?

(関西のなんちゃって教員)

 大阪市では、5月17日の住民投票に向けて、推進派、反対派共にヒートアップしていますね。
ところである番組での討論で、橋下市長にコメンテーターから「大阪都構想の内容が
良く分からない。もっと詳細に説明すべきでは?」との指摘がありました。
それに対し、「市のホームページに詳細な報告があるし、市民向けにタウンミーティングも
各地で行っている」と橋下市長は答え、さらに「評論家とかコメンテーターと言った専門家の方から
『わからない』と言われるが、そういう方のほとんどが、市のホームページに記載された計画書の
中身をきちんと読んでいない。専門家だと言うのなら、きちんと精査し、どの部分がどの様に
分かりにくいのかを言うべきだ」と反論されておりました。まさに正鵠を射る発言だと思いました。

 将来の薬剤師を目指している学生に講義していても、考える前に「どうしたらいいのですか?」と
すぐにやり方や解答を求める学生が多くなっているなぁ~と、ふと不安になることが多いです。
でもこれは学生の気質だけでもなく、薬剤師さんにも多いようです。 

 最近は薬剤師によるフィジカルアセスメントがブームの様で、各地で勉強会や講習会が行われています。 
一部では「ミニ医師を目指すのか!」「聴診器を首から下げたいだけだろ!」などと陰口を
たたかれてもおりますが、在宅医療に関与する上では身に付けておきたいスキルではあります。 
ところがこのフィジカルアセスメントの講習に関して気になる事がありました。
講習終了後半年~1年後に追跡アンケート調査を行ったところ、「講習は有用であったか?」、
「今後の業務に活かせそうか?」と言う質問に大半がYes!であったのに対し、
「講習で学んだスキルを実施したか?」と言う質問にはほとんどがNo!と言う回答だったそうです。 
その理由で多かったのが、「体系的な教育を受けていない」「医師や看護師の縄張りを荒らすことになる」
と言うものがあり、「今後スキルを活かすためには何が必要か?」と言う質問には、
「副作用発見のための講習会」「現場での教育」「疾患や病態の知識」と言う回答が多かったそうです。 
そしてこの講習の指導を行っている医師が「薬剤師さんは真面目に参加してくれるが、
一から十までお膳立てしないと動いてくれない」「患者さんのためにやることなのに
自ら動こうとしない」とため息をつきながら言っておりました。
勉強をするのは好きで、研修会などには良く参加しているのに、それを業務に活かそうとしない、
私が某薬局で管理薬剤師をしていた10年ほど前に、こういう若い薬剤師が結構いましたが、
傾向は変わらないようです。
学んだことをどう活かすか、そのためには何を勉強しなければならないか、自ら動かないと
薬剤師の存在価値は認められません。 口を開けて待っていれば食事にありつけるのは雛鳥だけです。 
フィジカルアセスメントのスキルを身に付けた事はあくまで入口にすぎず、そこから先の展開は
個々に異なります(在宅医療では個々の事情が大きく変わりますから)。
ですから、どう業務に活かすかを自分で考え、そのために必要な知識を膨大な資料の中から取捨選択し、
活躍の場を自ら開拓していく(臨床現場に行き、医師や看護師と渡り合う)気概が
今の薬剤師には必要だと思います。他者依存ではもう通用しない状況がひたひたと押し寄せています。

(関西のなんちゃって教員)

前回、薬剤師さんは中々発言をしたがらない、と言う話を書きました。 
総体的に薬剤師さんは「おとなしい」、「自分の意見をなかなか言わない」と
言う評価は是認して頂けると思いますが、今回は逆(?)の話です。

知り合いの大学教員が、ある地域の薬剤師会からの依頼で、来局者の薬剤師に
対する意識調査を行い、解析し、学会で共同発表されました。
発表した内容の一つに「薬局の薬剤師に処方箋以外の薬や市販薬の相談が
できることを知っている人は少ない」と言うものがあり、「薬局薬剤師の職能を
理解してもらう努力をする必要がある」と結論付けました。
これに対し、参加者の薬剤師がクレームをつけて来たそうです。
クレームとは「薬局薬剤師に薬の相談ができることは当然の事として認識されている。
この発表はおかしい!」と言うものでした。
伺うとその方は個人薬局のオーナー薬剤師で、その地域の薬剤師会の
役員でもあるそうです。 普段から薬剤師の職能を理解して頂くために
活動をされているとの事で、その成果か、ご自分の薬局には家族の処方薬の事や
健康相談などに来られる方がいるようです。 
ここまでは分かるのですが、「うちの薬局にはすでに薬の相談に来る人がいるのに、
このような発表をすると、薬剤師の職能が理解されていないと誤解されるので
訂正しろ!と言うのが主張の様です。 
発表内容は薬剤師会の依頼を受けきちんとアンケート調査し、解析をし、
薬剤師会の方ともディスカッションを行いまとめたものです。
きちんとエビデンスを得ている内容なので訂正する必要はないと、
教員が反論したところ、「大学と薬剤師会に抗議する!」と言い残して
会場を出ていったそうです。 
自分はきちんと啓蒙活動を行い、成果を得ているので、それを否定するような
発表に我慢がならなかった様です。 
しかし、冷静に考えれば八つ当たりに近い主張ではないでしょうか。 
ここまで極端な方は珍しいですが、学会や研究会での薬剤師さんの発表を
拝見していると、「私たちは患者さんのためにこのような事に取り組んでいます」
「患者さんのためにこのような工夫をしました」「患者さんのためにこんな便利な
ツールを開発しました」という主旨が散見されます。
患者さんのために常に検討をされている日常が伝わる良い発表もありますが、
中にはよくよく聞いてみると患者さんの評価が無かったり、あってもバイアスが
かかっていたり、そして中には(本当に患者さんが満足しているのかな?)と
思わざるを得ないようなものもあります。 
いわゆる独りよがりと言うものでしょうか。 
「私はこんな素晴らしい事をして患者さんに喜ばれているんだ!」と自慢げに
話す薬剤師さんって、周りにおられません? 
ある病院薬剤師の先生が「最近はそうでもないけど、薬剤部って結構孤立していたり、
他部署との関わりが希薄なので、井の中の蛙になりがちなんだよ。」と嘆息されていました。 
また、「うちの薬剤部長、真面目なんだけど、たまに独りよがりで融通が利かないんだよね。」
と知り合いの病院の副院長さんに愚痴られたこともあります。 
本当にきちんと患者さんに向き合い、努力をされている薬剤師さんほど腰が低く、
「私などまだ未熟で」と謙虚であることが多いような。
 
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」 

人格者とは言われないまでも、謙虚な気持ちで接する姿勢から、患者さんや
他のスタッフの満足度は生まれるのかも知れません。 
自己主張もほどほどが良いですね。
                           (関西のなんちゃって教員)

スモールグループディスカッション(SGD)に関しての認識は十分浸透しているかと思います。 
SGDでは最初に進行役、記録係、発表者を決め、進行役の進行に従って議論を進め、
記録係は、出てきた意見を記録するとともにスライドまたは模造紙の発表用資料(プロダクト)を
作製し、発表者は議論の過程を含めてグループでまとめた結論を発表します。
 
6年制薬学教育でも、実習などでこのSGDは積極的に取り入れられ、低学年から
結構行われています。 SGDでは進行役、記録係、発表者を3役と呼び、
最初に自主的にこの3役を決めるのですが、おとなしいと言われる薬学生は、
なかなか自主的に決まりません。 
低学年では、もじもじとしながら様子を伺うばかりで、ファシリテーターが
促してようやく決まる、と言う感じです。 しかし、4年生より上になると慣れてくるのか、
比較的早く3役が決まり、議論に突入していきます。 
ただ、これも「薬学部の中」の話で、他学部生と一緒に行う他職種連携の様な場では、
躊躇っているうちに他学部の学生が名乗りを上げ、薬学部生は「その他」になることがしばしばです。 
「やはり薬学部生はおとなしいのかな」と思っていたのですが、そんな折、トンでも話を聞きました。 

「薬剤師の職能を考える」と言うシンポジウムで、患者さんで組織されたNPOの代表者の方が
話して下さったのですが、医療系のシンポジウムやワークショップで、医療関係者と患者さんが
一緒にSGDをすることがあるのですが、3役を決める際に必ずと言っていいほど薬剤師は
「記録係をします!」と積極的に立候補し、そしてSGDが始まると黙々と板書を行い、
ほとんど意見を言わないそうです。
患者さんのクスリに対する関心は高く、薬物療法に関して専門家である薬剤師から
色々な意見を聞きたいらしいのですが、記録係に没頭する薬剤師は殆ど発言しないそうです。 
その代表者の方が常々不思議に思い、記録係に立候補する薬剤師に理由を聞いたところ、
「記録係なら発言しなくて済むから」との回答で、ビックリしたそうです。 
このシンポジウムの参加者は薬学部の教員と薬剤師会の先生方が大半でしたが、
教員は苦笑い、先生方は苦虫を噛み潰したような様相でした(的を射た指摘なのでしょうね)。 

SGDにおいて記録係は「記録もする係」であって「記録だけする係」ではありません。 
むしろ、記録をすることで俯瞰的にディスカッションを見ることができ、
冷静な意見を言える貴重な立場でもあります。 
何よりもディスカッションに参加していて発言したくないと言うのは如何なものでしょうか?
「おとなしい」ことと「発言をしない」ことは関係ありませんよね。 
医療人として、専門分野である薬物療法に関して積極的に発言せずに
誰が薬剤師の存在意義を認めてくれるのでしょうか? 
いみじくもそのシンポジウムで、薬剤師の職能を理解しもらうため、
薬剤師が行っている事、薬剤師ができる事を積極的にアピールしていく
「見える化」がキーワードとして挙げられていました。
医療についてディスカッションする場で発言をためらうのに「見える化」ができるのでしょうか?
自分の業務に、職能に自信を持っていればおのずと発言が出てくるはずです。

薬剤師さん、記録係ではなく、進行役や発表者に積極的に立候補しましょうね。
                                     (関西のなんちゃって教員)

年末に向け、薬学部では共用試験のCBT・OSCEに向けて準備に余念がありません。
特にOSCEは実務実習に向けた実技試験ですから、学生全員に一定レベルの調剤手技や
コミュニケーション能力を身に付けさせるため、事前実習にはかなりの労力が注がれます。 

この事前実習では現場で働いている薬剤師さんに指導薬剤師として参加をして
もらうことがあります。 貴重なお休みを犠牲にし、後進の育成のために参加して
下さる熱心な薬剤師さんばかりなのですが、中に僅かですが、身だしなみが
「う~ん?」という方がいます。
さすがにこの時期ですからTシャツに短パンはいませんが、よれよれのジーパンに
綿シャツやトレーナー、汚れたスニーカーですとか、逆に「これからお出かけ?」と
想像させるようなばっちりメイクでコロンの香りを振りまき、ヒールの音を
響かせるような方、かなり色を落とした茶髪。 
実は指導薬剤師を依頼する際に「身だしなみにはご配慮を」と一文を添えているのですが、
たぶん普段勤務されている恰好で来ているのでしょう。

学生には日ごろから身だしなみについて厳しく指導しているので、
そういう方が参加されると取り繕うのが大変です。 
そういえば、学術会議に出席した時にも、薬局薬剤師さんのラフな格好が目につきました。 
大学関係者であれば教員はもちろん、学生もスーツを着用しております。 
病院関係者も圧倒的にスーツの方が多いのですが、薬局関係者は逆にラフな格好の方が
多いようですね。 綿パン、柄物のシャツにジャケットを羽織る方は良い方で、
先日はジーパンにTシャツ、クロックスという強者を初めて見ました。 
様子を見ているとそれなりにお偉いさんと話したりしているので、ある程度の立場に
いる方らしいですが。 何よりも不思議なのは、周りと自分を見比べて、違和感を
感じないのか?と言う事です。(誰か教えてあげれば!と心の中でツッコみましたが) 

外見を良くすればよい!というものではありませんが、
「身だしなみは礼儀であり、志を表すものである!」と
大学時代には先輩やゼミの教授から厳しく言われたものです。 
貴重な発表をしてくれる方に、また自分の発表を聞くために足を運んでくれた方に
敬意を表すために身だしなみを整えると言うのは常識と思っていました。 
ラフな格好に「何らかのポリシー」があるのかも知れませんが、
それは周囲の人には分かりません。 
一緒にいた学生がぽつりと「薬局の薬剤師さんは常識が無い人が多いですね」と
つぶやきました。 患者さんも同じではないでしょうか。 
医療機関に行くと言うのは極端に言えば自分の人生(健康)を託しに行くわけです。 
そのような思いを受ける薬局として、薬局に勤務する薬剤師として、
清潔感のある服装に印象の良い化粧や髪型など、身だしなみをきちんとするのは、
TPOを考えると言う以前に、薬剤師業務への矜持であり、心意気であると思うのは、
頭が古い(硬い)のでしょうか?  

身だしなみを改めない学生に「君が40℃の高熱で息も絶え絶えで処方せんを持って
薬局に行った時に、君のような恰好をした薬剤師が出てきたらどう思う?
安心して処方せん預けられる?」と尋ねると「嫌かも知れない」と答えました。 

私の考えもあながち古い考えでもないようです。  (関西のなんちゃって教員)

この時期になると気になるのが、薬系大学の入試状況です。
薬学部に入学したいと志望し受験に訪れた高校生は果たして、
例年に比べて多かったのか、少なかったのか。
各薬系大学の教員に話を聞くと、どうやら今年は前年より受験者数は多かったようです。
話を聞いた教員は、安堵の表情を浮かべているように見えました。

Web出願を導入した大学では特に受験者が多かったとのことですが、
全般的にどの薬系大学においても、受験者は増えた模様です。

かつては、薬学教育6年制への移行に伴って、
ただでさえ高額な薬学部の学費負担が増えることや、
社会に出るまでの期間が2年延びることなどを懸念し、
薬学部への進学が受験生に敬遠された時期も、過去にはありました。

その結果、地方の新設薬系大学では受験者が減少し、
やむなく定員割れに踏み切った大学がいくつもありました。

しかし、昨年は薬学部の受験者数が増加し、各薬系大学は苦境から脱しました。
今回の受験では、そのような上昇傾向がさらに強まったようです。

なぜ、受験者数が増えたのでしょうか。
ゆとり教育を受けた高校生は今年で最後だそうです。
次回の受験からは試験問題のレベルが上がると見込まれるため、
高校生は浪人を避けようとして、
受験する大学の数を増やしたという影響があるようです。

もう一つは、これが最も強い要因だと考えられますが、
他学部の卒業生が就職に苦労する中、
薬剤師不足を背景に、薬剤師や薬学部卒業生に対する社会のニーズは高く、
就職に強い学部として再評価されたことによって、
薬学部の受験者が増えたのだろうと思われます。

受験者が増えることは各薬系大学にとって、好循環を生み出します。
受験に伴う収入は増えますし、定員割れも防止できます。
受験者が多ければ、それだけレベルの高い学生を選抜して入学させられます。
中高の学習内容を手取り足取り復習させる苦労も小さくなるでしょうし、
薬剤師国家試験の合格率も向上することでしょう。
何より、質の高い卒業生が社会に出て、大学のブランドを形作ってくれます。

一方、社会に出て活躍するためのパスポートともいえる薬剤師国家資格については、
3月1、2日に実施された国家試験の合格者の発表が3月31日に実施される見通しです。
既にその観測値が飛び交っていますが、昨年に比べて合格率は低下するとの見通しが濃厚です。
これまで高い合格率を誇ってきたある薬系大学も「今年は大幅に下がる」と嘆いていました。

この薬剤師国家試験の合格率の低下をどう考えればいいのでしょうか。

薬剤師国家試験には、全体で65%以上の得点を得ることなど合格基準が設定されています。
合格率に関係する要因としては、①国家試験が難しくなった②受験者のレベルが低くなった
という2つが考えられます。

薬剤師の需要が今後先細りすると見通し、輩出する薬剤師の数を抑えるために、
国家試験の内容を意図的に難しくしたという見方もあるでしょう。
基本的に国家試験の難易度は毎年、同じレベルに設定されているはずですから、
そんな操作が可能かどうかよく分かりません。

むしろ考えやすいのは、単純に国家試験受験者のレベルが前年に比べて低下したという要因です。
ちょうど受験したのは、薬学教育6年制の第3期生に該当します。
薬学部の人気が低下し、各大学が定員割れに苦しむ中で、入学してきた学生です。
そのレベルはいかほどだったのでしょうか。

このように大学受験と国家試験の現状を踏まえて感じるのは、
いいサイクルを形作り、それを持続させることがいかに重要か、ということです。

薬剤師が社会から高い評価を得ることによって、
薬学部に入学したいと希望する高校生が増えれば、
大学はレベルの高い学生を確保できます。
その結果、質の高い薬剤師を社会に輩出できるようになり、
その薬剤師がさらに活躍し、評価を獲得すれば、
薬学部の人気はもっと高まります。

この逆の悪いサイクルも当然、成り立ちます。
薬剤師が社会から高く評価されなくなれば、
薬学部はレベルの低い学生しか集められなくなります。
その結果、輩出される薬剤師の質も低くなり、
薬剤師は社会から評価されなくなって、
薬学部の人気がさらに低下するというサイクルです。

いいサイクルを回していくにはやはり、
既に社会に出て働いている薬剤師が様々な場面で活躍し、
実績を構築して、高い評価を獲得していくことが重要です。

薬学部受験者数の増減や、薬剤師国家試験合格率の高低は、
大学の責任だけではありません。
社会に出ている薬剤師が、その責任の一端を担っていることを強く自覚するべきでしょう。

2014年度の診療報酬改定の概要が12日に決まりました。
今まで空欄だったところに具体的な点数が入り、
中央社会保険医療協議会から厚生労働大臣への答申として示されました。
薬局薬剤師に関連する調剤報酬の各項目の細かな解説は他に譲るとして、
全体的な傾向を読み解いてみましょう。
 
今回の調剤報酬の改定幅は、消費税対応分0.18%を含めて0.22%です。
ほぼ横ばいですね。つまり、調剤報酬に回せる財源に増減はなしということです。
ある項目の点数を増やせば、他の項目の点数を減らすという操作をして、
全体で合計すれば調剤報酬の総額に変化はほぼないように調整する訳です。

もっともこれは直近の医療費をベースに調整したもので、
患者の自然増は計算には入っていません。
高齢化によって患者数が増えれば、当然調剤報酬の総額は増えます。
従って、改定上の数字では調剤報酬は横ばいですが、実際には患者数の増加によって、
2014年度の調剤報酬の総額は増えるでしょう。
当然のことですが、薬局経営においては今後、
自然に増加する患者をどう確保するかが、一つの焦点になります。

さて、今回の改定では、どこが削られ、それがどこに手厚く配分されたのでしょうか。
まずは削られた部分。
大手チェーン薬局や門前薬局に厳しい内容になりました。
調剤基本料の特例の要件に、特定医療機関からの処方箋集中率が90%以上で、
1カ月の枚数が2500枚を超える薬局が加えられました(24時間開局は除外)
集中率70%以上で1カ月の枚数が4000枚を超えるという従来の要件に加えて、
新たな要件の薬局においては、調剤基本料が25点(消費税対応分含む)に引き下げられるほか、
基準調剤加算は算定できません。
こうした措置を受け「薬局を分割して対応する」というチェーン薬局幹部の発言を、
報道で目にしましたが、そんなウルトラCは本当に実現可能なのでしょうか。要注目です。

また、卸との取引価格の妥結率が毎年9月末までに5割以下の場合は、
調剤基本料が31点(消費税対応分含む)に引き下げられます。
ギリギリまで根強く交渉して、より大きな薬価差益を生み出すという、
大手チェーン薬局が得意とする方法を実施しにくくなります。

一方、今回、どこに点数が手厚く配分されたのでしょうか。
在宅医療に参画している薬局をより高く評価する傾向が強まりました。
基準調剤加算1は10点から12点に引き上げられた上で、その算定要件には、
近隣薬局と連携した「24時間調剤」や在宅医療の体制整備が加えられました。
また、基準調剤加算2は30点から36点に引き上げられた上で、その算定要件には、
自薬局単独での「24時間調剤」や在宅医療の実績、
関連機関との連携体制整備が加えられました。
「24時間調剤」が具体的に何を指すのか、はっきりしませんが、
ハードルを上げて在宅医療への参画を促すという意図は感じられます。

また、在宅患者訪問薬剤管理指導料は、同一建物居住者以外の場合は650点に引き上げられました。
その一方で、同一建物居住者の場合は300点に引き下げられました。
さらに、同指導料の算定は「薬剤師1人について1日5回に限る」と制限されました。
高齢者施設の入居者をターゲットにしていた大手チェーン薬局にとっては、厳しい措置になるでしょう。
ただ、介護保険の算定要件はまた異なりますから、それほど影響はないのかもしれません。

いずれにしても、大手チェーン薬局には厳しい措置をして、
それで浮いた財源を、個人薬局の在宅医療への参画促進に回す、という印象を受けました。
無菌調剤室を共同利用した場合の無菌製剤処理加算の算定も、ようやく可能になります。
無菌室を持っていなくても、在宅医療に参画しやすくなります。

国の方針はずっと変わっていません。
高齢化に伴う医療費の増加をいかに抑制するか。
ベッド数をこれ以上増やさないための、在宅医療の推進です。
その方針は今後も続くことでしょう。
今回の改定だけでなく、在宅医療への参画を診療報酬で評価する傾向は、
ずっと変わらないでしょうし、ハードルもだんだん上がっていくでしょう。
在宅医療への参画は必須だと考えますが、いかがでしょうか。

医療費抑制の観点から、後発医薬品の使用促進も続きます。
調剤基本料における後発医薬品調剤体制加算は、
「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」で示された新指標の数量ベースにおいて、
後発医薬品の使用割合が55%以上、65%以上の2段階で評価されることになりました。
ハードルは上がりましたが、将来のことを考えると要件をクリアしておきたいところですね。

診療報酬改定には、将来の医療の姿をどう描くかというメッセージが込められています。
それを読み取った上で、中長期的な視野で自薬局の体制を構築していくべきでしょう。

今春の診療報酬改定をめぐる議論もいよいよ大詰め。
年末に決まった改定率を受けて、全体的な骨子が固まり、
今後は各項目の点数をどう設定するかという段階になってきました。

薬局薬剤師に関する主なポイントは、
①24時間調剤や在宅業務提供体制を考慮した、基準調剤加算の要件見直し
②お薬手帳を必要としない患者への薬剤服用歴管理指導料の見直し
③調剤を行う前の服薬状況や残薬の確認、後発品の意向確認
④後発医薬品調剤体制加算の要件見直し
⑤大規模薬局の調剤報酬の評価見直し
――といったところでしょうか。

今回の議論で残念だったのは、議論の途中まで盛り込まれていた、
「リフィル処方箋」の実現とも受け取れる項目が、
1月中旬の中医協での議論によって、削除されてしまったことです。

この項目は「特定機能病院及び500床以上の地域医療支援病院において
長期処方された場合のあらかじめ定められた日数の分割調剤の試行的導入を行う」
という内容でした。

リフィル処方箋とは、アメリカで導入されている仕組みです。
医師の再診を受けなくても、薬局を訪れて、その処方箋に記載された回数分の薬を、
繰り返して受け取ることができる制度のことです。

医療費の抑制が課題となっている日本にとっては、
医師の診察が減る分、医療費の削減につながるため、魅力的な制度です。

薬局薬剤師にとっては、医師の診察がないだけに、
効果や副作用を十分にモニタリングする必要があり、
医療における薬剤師の役割を大きく飛躍させる制度になります。

それだけに期待は強かったのですが、医師にとっても収入減が懸念されるだけに、
やはり反対を受けて、今回は見送られてしまいました。
次回の診療報酬改定でも検討項目にあがるようですので、
2年後にはなりますが、ぜひ実現してもらいたいですね。

さて、診療報酬改定は重要な話題ではありますが、
あまり足元の細かい点数のことばかり気にしていても、視野が狭くなってしまいます。
そんな中、日本学術会議が1月20日に、
「薬剤師の職能将来像と社会貢献」という提言を出しました。

薬局薬剤師に関連が深い項目としては
「地域医療における薬剤師の役割」と題して記載されています。
プライマリケアの担い手である薬剤師の役割を強調し、海外の事例を紹介しています。
骨子を以下に抜粋します。

・英国には、地域単位で医師と薬剤師が協定のもとに、特定の領域において
 薬剤師(薬局)に処方および薬剤交付を認めるPGDというシステムがある。

・英国では、一定の研修を経て医師とは独立に主に慢性疾患の診断・処方を行える
 独立処方者(IP)という資格を薬剤師が取得することも可能である。

・米国では共同薬物治療管理(CDTM)が普及している。

・CDTMは、抗凝固療法、糖尿病、脂質異常症治療などにおいて、医師との契約に基づき
 薬局で薬剤師が病状のモニターやそれに応じた処方変更、薬剤交付を行う。

・米国では、ワクチン接種などを薬局で行うことも多くの場合可能である。

医療の仕組みが異なるため、直接の対比はできませんが、
海外における薬剤師の役割には、目を見張るものがあります。

診療報酬改定の動向ばかりに目を奪われがちですが、
それはそれで注意深く動きを見守りつつ、
アゴをしっかり上げて、視線は遠くに据えておきたいものですね。

2014年度の診療報酬の改定率は0.1%増になることが決まりました。
診療報酬本体部分を0.73%引き上げる一方、
薬価は0.58%、材料価格は0.05%引き下げるため、
合計して診療報酬全体で0.1%の引き上げになります。

ただ、この中には消費税増税に伴う経費増の補填分として、
1.36%が含まれています。
これを除くと実質では1.26%のマイナス改定になりました。

今回は、消費税対応がからんでくるので、プラス改定なのかマイナス改定なのか、
非常にややこしいですね。
やはり、消費税の増税を考慮した実質の改定率に目を向けるべきでしょう。
そうなるとマイナス改定ですが、この消費税対応分を除いても、
診療報酬本体部分の実質の改定率は0.1%増えたことに注目すべきです。
報酬増を求める自民党の族議員や医師会などにも顔の立つ結果になりました。
2013年度の医療費は約42兆円と推定されることから、0.1%は約420億円に相当します。

さて、薬局薬剤師はこの改定率をどう評価すればいいのでしょうか。
0.73%増(消費税対応分0.63%)となった診療報酬本体部分のうち、
病院や診療所の報酬である「医科」は0.82%(0.71%)、
歯科医院の報酬である「歯科」は0.99%(0.87%)、
薬局の報酬である「調剤」は0.22%(0.18%)の引き上げになりました。
ここから消費税対応分を除くと、
医科は0.11%、歯科は0.12%、調剤は0.04%の引き上げ幅です。

気になるのはその配分比率です。
医療費に占める技術料の比率を考慮したそれぞれの改定率は、
以前は医科:歯科:調剤=1:1:0.4が通例でしたが、それは既に崩れています。
マイナス改定の時には一律1:1:1で減少分を負担することも過去にはありました。
直近では、2010年度は医科:歯科:調剤=1:1.2:0.3、
2012年度は医科:歯科:調剤=1:1.1:0.3という比率になっています。

さて、今回は、消費税対応分を含めた場合の比率は、
医科:歯科:調剤=1:1.2:0.27となりました。
消費税対応分を除くと医科:歯科:調剤=1:1.1:0.37です。
近年の配分比率がそのまま維持された格好になりました。

この数字は、いわばパイをどう分け合うかという比率ですから、
個人的にはもっと調剤が医科や歯科に喰われる可能性が
あるのではないかと思っていました。
しかし、蓋を開けてみれば、従来の比率が維持されました。

診療報酬本体部分が実質プラス改定になったために、
従来の比率が堅持されたのでしょうか。
もしこれがマイナス改定だったら、医科の取り分を確保するために、
調剤が標的になっていたはずです。
もっとも、薬局薬剤師は、技術料だけでなく、
薬価改定による経営への影響を大きく受けますから、
比率が維持されてよかったという単純な話でもありません。
今回の診療報酬の改定率についてみなさんはどう思われますか。

今後は、全体の改定率が決まりましたので、それを踏まえて
個々の診療報酬点数をどう設定するかという議論が本格化します。
12月25日の中央社会保険医療協議会総会で、その方向性の一部が示されました。
骨子を紹介します。

「基準調剤加算の見直し」としては、調剤報酬の加算要件が緩すぎるとして
「地域において在宅医療を支える在宅療養支援診療所(又は在宅療養支援病院)による
在宅医療に貢献する薬局として、24時間調剤、在宅患者に対する調剤並びに
薬学的管理及び指導等を提供する薬局を中心に評価するように見直していく」
とされています。

「薬剤服用歴管理指導料の見直し」としては
「患者の状態を確認し、お薬手帳による情報提供が不要な患者に対しては、
患者の意思を確認の上でお薬手帳を交付しない場合について、
新たな薬剤服用歴管理指導料(低額)を設定してはどうか」
「お薬手帳の代わりに安易にシールの配布のみを行い、その後、お薬手帳にシールの貼付を
確認していないとの苦情もあることに鑑み、シールでの代替を認めないこととしてはどうか」
とされています。

このほか、支払い側からは以下の意見が上がっています。

▽調剤報酬体系を簡素化・合理化する観点から、
 調剤基本料と各種加算の包括化を推進すべき

▽同一法人の店舗数が多い調剤薬局の利益率が高く、適正化を図るべき。
 同一法人の店舗数、処方せん枚数や特定の医療機関の処方せんに基づく
 調剤割合等に着目したうえで、調剤基本料を適正化すべき

▽残薬対策のための分割調剤は、患者負担が増加しないことや
 効果を検証することを条件に試行的な実施が求められる

▽また、残薬の適正化は、処方せん受付時に残薬状況等を確認することに加え、
 主治医機能による服薬管理と組み合わせて対応することが重要である

来春の診療報酬改定をめぐる仁義なき戦いが、より一層激しさを増してきました。
日本医師会のシンクタンクである日医総研は11月26日、ワーキングペーパーとして
「医療費の伸びと診療報酬の関係についての考察-再診料と調剤技術料を中心に-」を公表。
医師の報酬に比べ、薬局薬剤師の調剤技術料が増えていることを詳細に分析し、
「新たに調剤報酬に創設された加算のハードルはあまり高くなかったのではないか」と指摘しました。
 
ワーキングペーパーでは、医療費のうち調剤医療費の伸びが著しいとし、
薬剤料だけでなく調剤技術料も調剤報酬改定率以上に伸びていると報告。
院外処方せんの増加だけでなく、他の要因もあるとして、
2008年度の改定で調剤基本料が42点から40点に引き下げられたものの、
同時に創設された後発医薬品調剤体制加算を多くの薬局は算定し、
調剤基本料の引き下げをカバーしたなどと分析しています。
その上で、加算のハードルは「あまり高くなかったのではないか」と推定しています。
 
一方、診療所では、2010 年度の改定で再診料が引き下げられ、
同時に創設された地域医療貢献加算は算定できたところのほうが少なかったと解説。
地域医療貢献加算は、休日・夜間の患者問い合わせなど質への評価だが、
薬局の加算は数量的なもので評価されていると違いを述べています。

また、院外処方は、院内処方に比べて患者負担は3割程度高くなることがあるとし、
「院内処方、院外処方のあり方も引き続き検討すべき重要課題のひとつ」としています。

医師の報酬よりも、薬局薬剤師の報酬が伸びていることへの憤りを、
このワーキングペーパー全体から強く感じます。

さて、来春の診療報酬改定の全体的な方向性が年末に決まります。
診療報酬本体と薬価を含めた全体として、プラス改定になるのか、マイナス改定になるのか。
それが決まった上で年明け以降、各項目の詳細な点数がはっきりしていきます。

診療報酬の本体部分がプラス改定になった時には、
病院や診療所の取り分である「医科」、歯科医院の取り分である「歯科」、
薬局の取り分である「調剤」が、その財源を分け合います。
マイナス改定の時には、これら3者が痛みを分かち合います。

かつては「医科」「歯科」「調剤」のそれぞれの技術料が、
だいたい同じ比率で上がるように、財源を分け合っていました。
現在では、そのような紳士協定は揺らぎつつあるように思います。
近年は、マイナス改定の時には「調剤」だけが大きく下げられたり、
日本歯科医師会が民主党支持に鞍替えしたことを受けて、
「歯科」の改定率が高くなったりしたこともありました。
この配分が今後、これまで以上に大きく崩れ、
「調剤」だけがひとり負けするような事態にならないかと懸念しています。

高齢化に伴う患者数の増加から、医療費はどんどん増えていきます。
それを抑制するため、診療報酬の点数増、新たな項目の新設は厳しさを増すでしょう。
こうした背景のもと、なりふり構わず他人の米櫃に手を突っ込み、
自らの食い扶持を確保するという姿勢が強まるのは、
むしろ当然といえるのかもしれません。
それが、日本医師会鈴木常任理事のスキヤキ発言や、
今回のワーキングペーパーに現れているように思います。
端的に言えば「調剤」に回す医療費を削って「医科」によこせ、ということでしょう。

一方、来春の診療報酬改定で調剤技術料の点数減が見込まれることに反発する声は、
現場の薬剤師からは、あまり聞こえてきません。
むしろ、減額されてもやむを得ないと、あきらめに似た空気を感じます。

点数に見合うだけの仕事をしていないと、薬局薬剤師自らが実感しているのだとしたら、
それはとても悲しいことです。
院外処方せん1枚あたりの薬局薬剤師の調剤技術料は2200円前後とされますが、
それだけのお金をもらうだけの仕事をしていることを、薬剤師自ら証明して欲しいものです。
医師も患者も、誰もその証明はしてくれません。
自らその有用性を客観的な証拠で示していかない限り、
「調剤」の劣勢は今後も続くのではないでしょうか。