薬剤師を楽しもう!

足元を見つつ、視線は遠くに

今春の診療報酬改定をめぐる議論もいよいよ大詰め。
年末に決まった改定率を受けて、全体的な骨子が固まり、
今後は各項目の点数をどう設定するかという段階になってきました。

薬局薬剤師に関する主なポイントは、
①24時間調剤や在宅業務提供体制を考慮した、基準調剤加算の要件見直し
②お薬手帳を必要としない患者への薬剤服用歴管理指導料の見直し
③調剤を行う前の服薬状況や残薬の確認、後発品の意向確認
④後発医薬品調剤体制加算の要件見直し
⑤大規模薬局の調剤報酬の評価見直し
――といったところでしょうか。

今回の議論で残念だったのは、議論の途中まで盛り込まれていた、
「リフィル処方箋」の実現とも受け取れる項目が、
1月中旬の中医協での議論によって、削除されてしまったことです。

この項目は「特定機能病院及び500床以上の地域医療支援病院において
長期処方された場合のあらかじめ定められた日数の分割調剤の試行的導入を行う」
という内容でした。

リフィル処方箋とは、アメリカで導入されている仕組みです。
医師の再診を受けなくても、薬局を訪れて、その処方箋に記載された回数分の薬を、
繰り返して受け取ることができる制度のことです。

医療費の抑制が課題となっている日本にとっては、
医師の診察が減る分、医療費の削減につながるため、魅力的な制度です。

薬局薬剤師にとっては、医師の診察がないだけに、
効果や副作用を十分にモニタリングする必要があり、
医療における薬剤師の役割を大きく飛躍させる制度になります。

それだけに期待は強かったのですが、医師にとっても収入減が懸念されるだけに、
やはり反対を受けて、今回は見送られてしまいました。
次回の診療報酬改定でも検討項目にあがるようですので、
2年後にはなりますが、ぜひ実現してもらいたいですね。

さて、診療報酬改定は重要な話題ではありますが、
あまり足元の細かい点数のことばかり気にしていても、視野が狭くなってしまいます。
そんな中、日本学術会議が1月20日に、
「薬剤師の職能将来像と社会貢献」という提言を出しました。

薬局薬剤師に関連が深い項目としては
「地域医療における薬剤師の役割」と題して記載されています。
プライマリケアの担い手である薬剤師の役割を強調し、海外の事例を紹介しています。
骨子を以下に抜粋します。

・英国には、地域単位で医師と薬剤師が協定のもとに、特定の領域において
 薬剤師(薬局)に処方および薬剤交付を認めるPGDというシステムがある。

・英国では、一定の研修を経て医師とは独立に主に慢性疾患の診断・処方を行える
 独立処方者(IP)という資格を薬剤師が取得することも可能である。

・米国では共同薬物治療管理(CDTM)が普及している。

・CDTMは、抗凝固療法、糖尿病、脂質異常症治療などにおいて、医師との契約に基づき
 薬局で薬剤師が病状のモニターやそれに応じた処方変更、薬剤交付を行う。

・米国では、ワクチン接種などを薬局で行うことも多くの場合可能である。

医療の仕組みが異なるため、直接の対比はできませんが、
海外における薬剤師の役割には、目を見張るものがあります。

診療報酬改定の動向ばかりに目を奪われがちですが、
それはそれで注意深く動きを見守りつつ、
アゴをしっかり上げて、視線は遠くに据えておきたいものですね。

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