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診療報酬の改定率をどう評価するか

2014年度の診療報酬の改定率は0.1%増になることが決まりました。
診療報酬本体部分を0.73%引き上げる一方、
薬価は0.58%、材料価格は0.05%引き下げるため、
合計して診療報酬全体で0.1%の引き上げになります。

ただ、この中には消費税増税に伴う経費増の補填分として、
1.36%が含まれています。
これを除くと実質では1.26%のマイナス改定になりました。

今回は、消費税対応がからんでくるので、プラス改定なのかマイナス改定なのか、
非常にややこしいですね。
やはり、消費税の増税を考慮した実質の改定率に目を向けるべきでしょう。
そうなるとマイナス改定ですが、この消費税対応分を除いても、
診療報酬本体部分の実質の改定率は0.1%増えたことに注目すべきです。
報酬増を求める自民党の族議員や医師会などにも顔の立つ結果になりました。
2013年度の医療費は約42兆円と推定されることから、0.1%は約420億円に相当します。

さて、薬局薬剤師はこの改定率をどう評価すればいいのでしょうか。
0.73%増(消費税対応分0.63%)となった診療報酬本体部分のうち、
病院や診療所の報酬である「医科」は0.82%(0.71%)、
歯科医院の報酬である「歯科」は0.99%(0.87%)、
薬局の報酬である「調剤」は0.22%(0.18%)の引き上げになりました。
ここから消費税対応分を除くと、
医科は0.11%、歯科は0.12%、調剤は0.04%の引き上げ幅です。

気になるのはその配分比率です。
医療費に占める技術料の比率を考慮したそれぞれの改定率は、
以前は医科:歯科:調剤=1:1:0.4が通例でしたが、それは既に崩れています。
マイナス改定の時には一律1:1:1で減少分を負担することも過去にはありました。
直近では、2010年度は医科:歯科:調剤=1:1.2:0.3、
2012年度は医科:歯科:調剤=1:1.1:0.3という比率になっています。

さて、今回は、消費税対応分を含めた場合の比率は、
医科:歯科:調剤=1:1.2:0.27となりました。
消費税対応分を除くと医科:歯科:調剤=1:1.1:0.37です。
近年の配分比率がそのまま維持された格好になりました。

この数字は、いわばパイをどう分け合うかという比率ですから、
個人的にはもっと調剤が医科や歯科に喰われる可能性が
あるのではないかと思っていました。
しかし、蓋を開けてみれば、従来の比率が維持されました。

診療報酬本体部分が実質プラス改定になったために、
従来の比率が堅持されたのでしょうか。
もしこれがマイナス改定だったら、医科の取り分を確保するために、
調剤が標的になっていたはずです。
もっとも、薬局薬剤師は、技術料だけでなく、
薬価改定による経営への影響を大きく受けますから、
比率が維持されてよかったという単純な話でもありません。
今回の診療報酬の改定率についてみなさんはどう思われますか。

今後は、全体の改定率が決まりましたので、それを踏まえて
個々の診療報酬点数をどう設定するかという議論が本格化します。
12月25日の中央社会保険医療協議会総会で、その方向性の一部が示されました。
骨子を紹介します。

「基準調剤加算の見直し」としては、調剤報酬の加算要件が緩すぎるとして
「地域において在宅医療を支える在宅療養支援診療所(又は在宅療養支援病院)による
在宅医療に貢献する薬局として、24時間調剤、在宅患者に対する調剤並びに
薬学的管理及び指導等を提供する薬局を中心に評価するように見直していく」
とされています。

「薬剤服用歴管理指導料の見直し」としては
「患者の状態を確認し、お薬手帳による情報提供が不要な患者に対しては、
患者の意思を確認の上でお薬手帳を交付しない場合について、
新たな薬剤服用歴管理指導料(低額)を設定してはどうか」
「お薬手帳の代わりに安易にシールの配布のみを行い、その後、お薬手帳にシールの貼付を
確認していないとの苦情もあることに鑑み、シールでの代替を認めないこととしてはどうか」
とされています。

このほか、支払い側からは以下の意見が上がっています。

▽調剤報酬体系を簡素化・合理化する観点から、
 調剤基本料と各種加算の包括化を推進すべき

▽同一法人の店舗数が多い調剤薬局の利益率が高く、適正化を図るべき。
 同一法人の店舗数、処方せん枚数や特定の医療機関の処方せんに基づく
 調剤割合等に着目したうえで、調剤基本料を適正化すべき

▽残薬対策のための分割調剤は、患者負担が増加しないことや
 効果を検証することを条件に試行的な実施が求められる

▽また、残薬の適正化は、処方せん受付時に残薬状況等を確認することに加え、
 主治医機能による服薬管理と組み合わせて対応することが重要である

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