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診療報酬改定をめぐる戦い

来春の診療報酬改定をめぐる仁義なき戦いが、より一層激しさを増してきました。
日本医師会のシンクタンクである日医総研は11月26日、ワーキングペーパーとして
「医療費の伸びと診療報酬の関係についての考察-再診料と調剤技術料を中心に-」を公表。
医師の報酬に比べ、薬局薬剤師の調剤技術料が増えていることを詳細に分析し、
「新たに調剤報酬に創設された加算のハードルはあまり高くなかったのではないか」と指摘しました。
 
ワーキングペーパーでは、医療費のうち調剤医療費の伸びが著しいとし、
薬剤料だけでなく調剤技術料も調剤報酬改定率以上に伸びていると報告。
院外処方せんの増加だけでなく、他の要因もあるとして、
2008年度の改定で調剤基本料が42点から40点に引き下げられたものの、
同時に創設された後発医薬品調剤体制加算を多くの薬局は算定し、
調剤基本料の引き下げをカバーしたなどと分析しています。
その上で、加算のハードルは「あまり高くなかったのではないか」と推定しています。
 
一方、診療所では、2010 年度の改定で再診料が引き下げられ、
同時に創設された地域医療貢献加算は算定できたところのほうが少なかったと解説。
地域医療貢献加算は、休日・夜間の患者問い合わせなど質への評価だが、
薬局の加算は数量的なもので評価されていると違いを述べています。

また、院外処方は、院内処方に比べて患者負担は3割程度高くなることがあるとし、
「院内処方、院外処方のあり方も引き続き検討すべき重要課題のひとつ」としています。

医師の報酬よりも、薬局薬剤師の報酬が伸びていることへの憤りを、
このワーキングペーパー全体から強く感じます。

さて、来春の診療報酬改定の全体的な方向性が年末に決まります。
診療報酬本体と薬価を含めた全体として、プラス改定になるのか、マイナス改定になるのか。
それが決まった上で年明け以降、各項目の詳細な点数がはっきりしていきます。

診療報酬の本体部分がプラス改定になった時には、
病院や診療所の取り分である「医科」、歯科医院の取り分である「歯科」、
薬局の取り分である「調剤」が、その財源を分け合います。
マイナス改定の時には、これら3者が痛みを分かち合います。

かつては「医科」「歯科」「調剤」のそれぞれの技術料が、
だいたい同じ比率で上がるように、財源を分け合っていました。
現在では、そのような紳士協定は揺らぎつつあるように思います。
近年は、マイナス改定の時には「調剤」だけが大きく下げられたり、
日本歯科医師会が民主党支持に鞍替えしたことを受けて、
「歯科」の改定率が高くなったりしたこともありました。
この配分が今後、これまで以上に大きく崩れ、
「調剤」だけがひとり負けするような事態にならないかと懸念しています。

高齢化に伴う患者数の増加から、医療費はどんどん増えていきます。
それを抑制するため、診療報酬の点数増、新たな項目の新設は厳しさを増すでしょう。
こうした背景のもと、なりふり構わず他人の米櫃に手を突っ込み、
自らの食い扶持を確保するという姿勢が強まるのは、
むしろ当然といえるのかもしれません。
それが、日本医師会鈴木常任理事のスキヤキ発言や、
今回のワーキングペーパーに現れているように思います。
端的に言えば「調剤」に回す医療費を削って「医科」によこせ、ということでしょう。

一方、来春の診療報酬改定で調剤技術料の点数減が見込まれることに反発する声は、
現場の薬剤師からは、あまり聞こえてきません。
むしろ、減額されてもやむを得ないと、あきらめに似た空気を感じます。

点数に見合うだけの仕事をしていないと、薬局薬剤師自らが実感しているのだとしたら、
それはとても悲しいことです。
院外処方せん1枚あたりの薬局薬剤師の調剤技術料は2200円前後とされますが、
それだけのお金をもらうだけの仕事をしていることを、薬剤師自ら証明して欲しいものです。
医師も患者も、誰もその証明はしてくれません。
自らその有用性を客観的な証拠で示していかない限り、
「調剤」の劣勢は今後も続くのではないでしょうか。

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