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診療報酬改定に見る、将来の医療の姿

2014年度の診療報酬改定の概要が12日に決まりました。
今まで空欄だったところに具体的な点数が入り、
中央社会保険医療協議会から厚生労働大臣への答申として示されました。
薬局薬剤師に関連する調剤報酬の各項目の細かな解説は他に譲るとして、
全体的な傾向を読み解いてみましょう。
 
今回の調剤報酬の改定幅は、消費税対応分0.18%を含めて0.22%です。
ほぼ横ばいですね。つまり、調剤報酬に回せる財源に増減はなしということです。
ある項目の点数を増やせば、他の項目の点数を減らすという操作をして、
全体で合計すれば調剤報酬の総額に変化はほぼないように調整する訳です。

もっともこれは直近の医療費をベースに調整したもので、
患者の自然増は計算には入っていません。
高齢化によって患者数が増えれば、当然調剤報酬の総額は増えます。
従って、改定上の数字では調剤報酬は横ばいですが、実際には患者数の増加によって、
2014年度の調剤報酬の総額は増えるでしょう。
当然のことですが、薬局経営においては今後、
自然に増加する患者をどう確保するかが、一つの焦点になります。

さて、今回の改定では、どこが削られ、それがどこに手厚く配分されたのでしょうか。
まずは削られた部分。
大手チェーン薬局や門前薬局に厳しい内容になりました。
調剤基本料の特例の要件に、特定医療機関からの処方箋集中率が90%以上で、
1カ月の枚数が2500枚を超える薬局が加えられました(24時間開局は除外)
集中率70%以上で1カ月の枚数が4000枚を超えるという従来の要件に加えて、
新たな要件の薬局においては、調剤基本料が25点(消費税対応分含む)に引き下げられるほか、
基準調剤加算は算定できません。
こうした措置を受け「薬局を分割して対応する」というチェーン薬局幹部の発言を、
報道で目にしましたが、そんなウルトラCは本当に実現可能なのでしょうか。要注目です。

また、卸との取引価格の妥結率が毎年9月末までに5割以下の場合は、
調剤基本料が31点(消費税対応分含む)に引き下げられます。
ギリギリまで根強く交渉して、より大きな薬価差益を生み出すという、
大手チェーン薬局が得意とする方法を実施しにくくなります。

一方、今回、どこに点数が手厚く配分されたのでしょうか。
在宅医療に参画している薬局をより高く評価する傾向が強まりました。
基準調剤加算1は10点から12点に引き上げられた上で、その算定要件には、
近隣薬局と連携した「24時間調剤」や在宅医療の体制整備が加えられました。
また、基準調剤加算2は30点から36点に引き上げられた上で、その算定要件には、
自薬局単独での「24時間調剤」や在宅医療の実績、
関連機関との連携体制整備が加えられました。
「24時間調剤」が具体的に何を指すのか、はっきりしませんが、
ハードルを上げて在宅医療への参画を促すという意図は感じられます。

また、在宅患者訪問薬剤管理指導料は、同一建物居住者以外の場合は650点に引き上げられました。
その一方で、同一建物居住者の場合は300点に引き下げられました。
さらに、同指導料の算定は「薬剤師1人について1日5回に限る」と制限されました。
高齢者施設の入居者をターゲットにしていた大手チェーン薬局にとっては、厳しい措置になるでしょう。
ただ、介護保険の算定要件はまた異なりますから、それほど影響はないのかもしれません。

いずれにしても、大手チェーン薬局には厳しい措置をして、
それで浮いた財源を、個人薬局の在宅医療への参画促進に回す、という印象を受けました。
無菌調剤室を共同利用した場合の無菌製剤処理加算の算定も、ようやく可能になります。
無菌室を持っていなくても、在宅医療に参画しやすくなります。

国の方針はずっと変わっていません。
高齢化に伴う医療費の増加をいかに抑制するか。
ベッド数をこれ以上増やさないための、在宅医療の推進です。
その方針は今後も続くことでしょう。
今回の改定だけでなく、在宅医療への参画を診療報酬で評価する傾向は、
ずっと変わらないでしょうし、ハードルもだんだん上がっていくでしょう。
在宅医療への参画は必須だと考えますが、いかがでしょうか。

医療費抑制の観点から、後発医薬品の使用促進も続きます。
調剤基本料における後発医薬品調剤体制加算は、
「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」で示された新指標の数量ベースにおいて、
後発医薬品の使用割合が55%以上、65%以上の2段階で評価されることになりました。
ハードルは上がりましたが、将来のことを考えると要件をクリアしておきたいところですね。

診療報酬改定には、将来の医療の姿をどう描くかというメッセージが込められています。
それを読み取った上で、中長期的な視野で自薬局の体制を構築していくべきでしょう。

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