薬剤師を楽しもう!

他者依存が過ぎるのでは?

 大阪市では、5月17日の住民投票に向けて、推進派、反対派共にヒートアップしていますね。
ところである番組での討論で、橋下市長にコメンテーターから「大阪都構想の内容が
良く分からない。もっと詳細に説明すべきでは?」との指摘がありました。
それに対し、「市のホームページに詳細な報告があるし、市民向けにタウンミーティングも
各地で行っている」と橋下市長は答え、さらに「評論家とかコメンテーターと言った専門家の方から
『わからない』と言われるが、そういう方のほとんどが、市のホームページに記載された計画書の
中身をきちんと読んでいない。専門家だと言うのなら、きちんと精査し、どの部分がどの様に
分かりにくいのかを言うべきだ」と反論されておりました。まさに正鵠を射る発言だと思いました。

 将来の薬剤師を目指している学生に講義していても、考える前に「どうしたらいいのですか?」と
すぐにやり方や解答を求める学生が多くなっているなぁ~と、ふと不安になることが多いです。
でもこれは学生の気質だけでもなく、薬剤師さんにも多いようです。 

 最近は薬剤師によるフィジカルアセスメントがブームの様で、各地で勉強会や講習会が行われています。 
一部では「ミニ医師を目指すのか!」「聴診器を首から下げたいだけだろ!」などと陰口を
たたかれてもおりますが、在宅医療に関与する上では身に付けておきたいスキルではあります。 
ところがこのフィジカルアセスメントの講習に関して気になる事がありました。
講習終了後半年~1年後に追跡アンケート調査を行ったところ、「講習は有用であったか?」、
「今後の業務に活かせそうか?」と言う質問に大半がYes!であったのに対し、
「講習で学んだスキルを実施したか?」と言う質問にはほとんどがNo!と言う回答だったそうです。 
その理由で多かったのが、「体系的な教育を受けていない」「医師や看護師の縄張りを荒らすことになる」
と言うものがあり、「今後スキルを活かすためには何が必要か?」と言う質問には、
「副作用発見のための講習会」「現場での教育」「疾患や病態の知識」と言う回答が多かったそうです。 
そしてこの講習の指導を行っている医師が「薬剤師さんは真面目に参加してくれるが、
一から十までお膳立てしないと動いてくれない」「患者さんのためにやることなのに
自ら動こうとしない」とため息をつきながら言っておりました。
勉強をするのは好きで、研修会などには良く参加しているのに、それを業務に活かそうとしない、
私が某薬局で管理薬剤師をしていた10年ほど前に、こういう若い薬剤師が結構いましたが、
傾向は変わらないようです。
学んだことをどう活かすか、そのためには何を勉強しなければならないか、自ら動かないと
薬剤師の存在価値は認められません。 口を開けて待っていれば食事にありつけるのは雛鳥だけです。 
フィジカルアセスメントのスキルを身に付けた事はあくまで入口にすぎず、そこから先の展開は
個々に異なります(在宅医療では個々の事情が大きく変わりますから)。
ですから、どう業務に活かすかを自分で考え、そのために必要な知識を膨大な資料の中から取捨選択し、
活躍の場を自ら開拓していく(臨床現場に行き、医師や看護師と渡り合う)気概が
今の薬剤師には必要だと思います。他者依存ではもう通用しない状況がひたひたと押し寄せています。

(関西のなんちゃって教員)

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