薬剤師を楽しもう!

自己主張はほどほどに

前回、薬剤師さんは中々発言をしたがらない、と言う話を書きました。 
総体的に薬剤師さんは「おとなしい」、「自分の意見をなかなか言わない」と
言う評価は是認して頂けると思いますが、今回は逆(?)の話です。

知り合いの大学教員が、ある地域の薬剤師会からの依頼で、来局者の薬剤師に
対する意識調査を行い、解析し、学会で共同発表されました。
発表した内容の一つに「薬局の薬剤師に処方箋以外の薬や市販薬の相談が
できることを知っている人は少ない」と言うものがあり、「薬局薬剤師の職能を
理解してもらう努力をする必要がある」と結論付けました。
これに対し、参加者の薬剤師がクレームをつけて来たそうです。
クレームとは「薬局薬剤師に薬の相談ができることは当然の事として認識されている。
この発表はおかしい!」と言うものでした。
伺うとその方は個人薬局のオーナー薬剤師で、その地域の薬剤師会の
役員でもあるそうです。 普段から薬剤師の職能を理解して頂くために
活動をされているとの事で、その成果か、ご自分の薬局には家族の処方薬の事や
健康相談などに来られる方がいるようです。 
ここまでは分かるのですが、「うちの薬局にはすでに薬の相談に来る人がいるのに、
このような発表をすると、薬剤師の職能が理解されていないと誤解されるので
訂正しろ!と言うのが主張の様です。 
発表内容は薬剤師会の依頼を受けきちんとアンケート調査し、解析をし、
薬剤師会の方ともディスカッションを行いまとめたものです。
きちんとエビデンスを得ている内容なので訂正する必要はないと、
教員が反論したところ、「大学と薬剤師会に抗議する!」と言い残して
会場を出ていったそうです。 
自分はきちんと啓蒙活動を行い、成果を得ているので、それを否定するような
発表に我慢がならなかった様です。 
しかし、冷静に考えれば八つ当たりに近い主張ではないでしょうか。 
ここまで極端な方は珍しいですが、学会や研究会での薬剤師さんの発表を
拝見していると、「私たちは患者さんのためにこのような事に取り組んでいます」
「患者さんのためにこのような工夫をしました」「患者さんのためにこんな便利な
ツールを開発しました」という主旨が散見されます。
患者さんのために常に検討をされている日常が伝わる良い発表もありますが、
中にはよくよく聞いてみると患者さんの評価が無かったり、あってもバイアスが
かかっていたり、そして中には(本当に患者さんが満足しているのかな?)と
思わざるを得ないようなものもあります。 
いわゆる独りよがりと言うものでしょうか。 
「私はこんな素晴らしい事をして患者さんに喜ばれているんだ!」と自慢げに
話す薬剤師さんって、周りにおられません? 
ある病院薬剤師の先生が「最近はそうでもないけど、薬剤部って結構孤立していたり、
他部署との関わりが希薄なので、井の中の蛙になりがちなんだよ。」と嘆息されていました。 
また、「うちの薬剤部長、真面目なんだけど、たまに独りよがりで融通が利かないんだよね。」
と知り合いの病院の副院長さんに愚痴られたこともあります。 
本当にきちんと患者さんに向き合い、努力をされている薬剤師さんほど腰が低く、
「私などまだ未熟で」と謙虚であることが多いような。
 
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」 

人格者とは言われないまでも、謙虚な気持ちで接する姿勢から、患者さんや
他のスタッフの満足度は生まれるのかも知れません。 
自己主張もほどほどが良いですね。
                           (関西のなんちゃって教員)

前の記事 : 記録係は積極的に?
次の記事 : 他者依存が過ぎるのでは?