薬剤師を楽しもう!

記録係は積極的に?

スモールグループディスカッション(SGD)に関しての認識は十分浸透しているかと思います。 
SGDでは最初に進行役、記録係、発表者を決め、進行役の進行に従って議論を進め、
記録係は、出てきた意見を記録するとともにスライドまたは模造紙の発表用資料(プロダクト)を
作製し、発表者は議論の過程を含めてグループでまとめた結論を発表します。
 
6年制薬学教育でも、実習などでこのSGDは積極的に取り入れられ、低学年から
結構行われています。 SGDでは進行役、記録係、発表者を3役と呼び、
最初に自主的にこの3役を決めるのですが、おとなしいと言われる薬学生は、
なかなか自主的に決まりません。 
低学年では、もじもじとしながら様子を伺うばかりで、ファシリテーターが
促してようやく決まる、と言う感じです。 しかし、4年生より上になると慣れてくるのか、
比較的早く3役が決まり、議論に突入していきます。 
ただ、これも「薬学部の中」の話で、他学部生と一緒に行う他職種連携の様な場では、
躊躇っているうちに他学部の学生が名乗りを上げ、薬学部生は「その他」になることがしばしばです。 
「やはり薬学部生はおとなしいのかな」と思っていたのですが、そんな折、トンでも話を聞きました。 

「薬剤師の職能を考える」と言うシンポジウムで、患者さんで組織されたNPOの代表者の方が
話して下さったのですが、医療系のシンポジウムやワークショップで、医療関係者と患者さんが
一緒にSGDをすることがあるのですが、3役を決める際に必ずと言っていいほど薬剤師は
「記録係をします!」と積極的に立候補し、そしてSGDが始まると黙々と板書を行い、
ほとんど意見を言わないそうです。
患者さんのクスリに対する関心は高く、薬物療法に関して専門家である薬剤師から
色々な意見を聞きたいらしいのですが、記録係に没頭する薬剤師は殆ど発言しないそうです。 
その代表者の方が常々不思議に思い、記録係に立候補する薬剤師に理由を聞いたところ、
「記録係なら発言しなくて済むから」との回答で、ビックリしたそうです。 
このシンポジウムの参加者は薬学部の教員と薬剤師会の先生方が大半でしたが、
教員は苦笑い、先生方は苦虫を噛み潰したような様相でした(的を射た指摘なのでしょうね)。 

SGDにおいて記録係は「記録もする係」であって「記録だけする係」ではありません。 
むしろ、記録をすることで俯瞰的にディスカッションを見ることができ、
冷静な意見を言える貴重な立場でもあります。 
何よりもディスカッションに参加していて発言したくないと言うのは如何なものでしょうか?
「おとなしい」ことと「発言をしない」ことは関係ありませんよね。 
医療人として、専門分野である薬物療法に関して積極的に発言せずに
誰が薬剤師の存在意義を認めてくれるのでしょうか? 
いみじくもそのシンポジウムで、薬剤師の職能を理解しもらうため、
薬剤師が行っている事、薬剤師ができる事を積極的にアピールしていく
「見える化」がキーワードとして挙げられていました。
医療についてディスカッションする場で発言をためらうのに「見える化」ができるのでしょうか?
自分の業務に、職能に自信を持っていればおのずと発言が出てくるはずです。

薬剤師さん、記録係ではなく、進行役や発表者に積極的に立候補しましょうね。
                                     (関西のなんちゃって教員)

前の記事 : 身だしなみは志を表す!
次の記事 : 自己主張はほどほどに