薬剤師を楽しもう!

双方向性の関係構築は可能か?

 
各地の薬剤師会の重要な事業の一つに、会員の研修事業があります。
薬剤師会の会報をパラパラめくると、研修会の予定として、
日時や場所、講師の氏名や肩書き、講演テーマが紹介されています。

その中でも多いのが医師を講師に迎えての研修会。
近隣病院の専門医が、最新の薬物療法を解説するという講演をよく目にします。
臨床の最前線で活躍している医師に、専門的な薬物療法について教えを請う。
これはこれで重要なことで今後も続けていくべきことです。
しかし、本当にそれだけでいいのか、それだけではちょっと寂しいんじゃないか、
と少し考え込んでしまいました。

薬剤師は、薬の専門家です。専門家というからには、
薬物療法について一通り把握していなければいけません。
そうはいっても、
実際の臨床現場での診断や処方に通じている訳ではありませんから、
それを専門医から学び、補足するのは重要なことです。
かといって、医師から一方的に教えを受け続けるだけでいいのでしょうか。
これは薬局薬剤師を想定してのことですが、
薬の専門家なら、薬剤師から医師に何かを還元するという、
逆の方向性があってもいいように思います。

それぞれの専門分野で力を発揮したり、
お互いが足りないところを補い合ったりするのがチーム医療だとすれば、
このような双方向性の関係が求められるのではないでしょうか。
 
専門分野の薬物療法について専門医が詳しいのは当然です。
しかし、専門外の分野について医師は意外に十分な知識を持っていなかったり、
その知識が古かったりするようです。

また、開業医は、病院から独立した直後は豊富な知識を持っているかもしれませんが、
開業から年月が経過し、他の医師や医療者との交流が乏しくなるうちに、
知識が錆びてしまっているかもしれません。
他にどんな薬物療法の選択肢があるのか、
知りたいと思っているのかもしれません。
そこを薬局薬剤師が教えたり、補完したりすることには、
意味があるように思えます。

病院では、薬剤師が病棟に常駐して業務を行う機会が増えた結果、
例えば抗菌薬の選択や使い方など医師の専門外の分野を薬剤師が補完するという
役割分担ができつつあるようです。
こうした活動に加え、病院では薬剤部にDI室があり、
医師や看護師からの薬に関する日常の疑問に薬剤師が回答しています。

薬局薬剤師も地域の開業医と似たような関係を構築することはできないでしょうか。
それぞれの薬局がその地域のDI機能を果たして医師からの問い合わせに答えたり、
薬局薬剤師が講師になってその地域で薬の研修会を開いたり、
新薬の採用だってMRの情報に依存するのではなく、
薬局薬剤師から客観的な情報を医師に提供することは不可能でしょうか。
 
こういった関係はすぐに構築できるものではないでしょう。
実現には、医師を凌駕するような圧倒的な知識や経験が必要になるかもしれません。
また、「薬剤師が不足する中、毎日の処方箋の調剤をこなすだけで精一杯、
教えられるほどの知識を身につけるような時間はない」
「例え知識を身につけたとしても、医師は薬局薬剤師にそんな役割は求めていない」
などの反論が思い浮かびます。

確かに、現実はそうかもしれません。
ただ、理想の姿を掲げて、頭の片隅にでも置いておくことは重要です。
その上で、少しずつ、できることから取り組んでいくという姿勢を貫けば、
今以上にいい関係を地域の医療者と構築できるのだろうと信じています。
 

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