医薬分業へのバッシング、一般用医薬品のネット販売解禁と、
薬剤師をとりまく環境がどんどん厳しくなっています。
これらは、来春の診療報酬改定に向けた牽制球であったり、
参議院選挙を視野に入れた思惑であったりし、
本来の目的はそこにはないにせよ、
結果的に、薬剤師の職域に外野から土足で踏み込んでくるような事態になっています。
社会における薬剤師の役割は一体何なのか。
薬剤師は、社会にどんなメリットをもたらしているのか。
そしてこれから先、社会にどんなメリットをもたらすことができるのか。
改めて、それぞれの薬剤師が思考を深める時期にきているのではないでしょうか。
社会における薬剤師の役割は様々です。
働く場所が違えば、その役割も異なってきます。
ここでは医薬分業に焦点を当てて、薬局薬剤師が果たすべき役割について考えてみます。
医薬分業のメリットとして何が挙げられるでしょうか。
正確な調剤によって、間違った薬を服用するリスクを低く抑えられる。
複数の医療機関の処方箋を薬局に集中させることによって、
同じ種類の薬が重複して投与されるのを防止する。
専門家の視点から相互作用をチェックし、その発生を防止する。
副作用の症状を早期に発見し、重篤化するのを防ぐ。
他にもメリットはありますが、悪い事態に陥るのを未然に防止する、
というメリットを中心に挙げてみました。
ざっと見ても分かるように、これらのメリットは国民の目には見えにくく、
何も問題がなければ、理解してもらえるものではありません。
だからこそ「ただ薬を数えて渡すくらいだったら、誰にでもできるんじゃないか。
薬剤師は要らないんじゃないか」という、薬剤師不要論が出てくるのでしょう。
それでは、医薬分業のメリットを理解してもらうにはどうしたらいいのでしょうか。
ポイントはメリットの"見える化"を進めることだと思います。
医師に疑義照会を行った時に、患者には何事もなかったかのように振るまっていませんか。
医師を貶めてはいけませんが、薬剤師がきちんとチェックしているということを、
上手な言葉で患者に伝える努力を惜しんではいけません。
患者との対話を増やすことも、メリットの実感に直結するでしょう。
対話の結果、薬剤師から医師に伝えるべきことがあれば、それをメモにして患者にも渡す。
そうすれば患者にとっても、薬剤師の役割が何なのか、
容易に理解できるのではないでしょうか。
また、子供向けの薬剤師体験が各地の薬局で実施されていますが、
調剤の工程を見てもらうことも有効です。
子供向けですが、ターゲットは付き添いできた保護者です。
処方箋を受け取ってから薬を渡すまで、どんなプロセスを経ているのか。
調剤機器にどれだけ設備投資をしているのか。
待合室にいるだけでは分からない、調剤室の内側での作業を見てもらい、
理解を深めてもらいましょう。
さらに、医薬分業がどれだけ役立っているのか、複数の薬局のデータを集め、
客観的な数字で示すことも、国の政策や診療報酬に影響を及ぼすために重要です。
メリットの"見える化"が大事と書きましたが、
そもそもメリットを各現場で生み出せていないことには話になりません。
"見える化"と併行して、メリットを生み出す"行動"の推進を。
まずはそこから、といったところでしょうか。