薬剤師を楽しもう!

アドヒアランスの向上を目指そう

アドヒアランス、という言葉を聞いたことがあると思います。

アドヒアランスとは、患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けることを意味する。(日本薬学会”薬学用語解説”より)

通常よく使われる言葉として、「コンプライアンス」というものがあります。これの本来の意味は”法令遵守”で「医療者の指示に患者がどの程度従うか」という強制的なものが基準にあります。ですから、医薬品の服用を規則正しく守らない「ノンコンプライアンス」の原因は患者側にある、と強調されてきました。

しかし、治療の成功って患者側だけの問題でしょうか?

治療の成功は「患者の積極的な治療への参加」にある。という概念から始まるのが「アドヒアランス」です。

このアドヒアランスを規定するものは治療内容、患者側因子、医療者側因子、患者・医療者の相互関係という点でコンプライアンスとは大きく異なる。例えば服薬アドヒアランスを良好に維持するためには、その治療法は患者にとって実行可能か、服薬を妨げる因子があるとすればそれは何か、それを解決するためには何が必要かなどを医療者が患者とともに考え、相談の上決定していく必要がある。(日本薬学会”薬学用語解説”より)

どのようにすれば患者が積極的に治療をしてくれるのか?を考えて、知恵を働かせるのが、現在の医療者です。特に服薬指導をする薬剤師には、服薬アドヒアランスとは大変密接に関わってきます。

先日、パーキンソン病の専門医の講演を聞く機会があったのですが、
「L-ドーパがなぜ複雑な飲み方をしなければならないのか、を、患者がもっと知れば、患者はもっと重篤な症状を出さずにすむのです。治療に積極的になるには、服薬アドヒアランスが最も重要なのです。」と私達薬剤師におっしゃっていました。

またこのアドヒアランスがもっとも大切といわれる精神神経疾患においてはこんな研究もなされています。

「Stephenson氏らは経口第二世代抗精神病薬を服用している患者について、医師が認識しているアドヒアランスと患者による薬局への薬剤請求から判定した実際のアドヒアランスを比較し、「医師が思っているよりも患者のアドヒアランスは良好でないため、再発予防も見据え適切な介入を行うことが重要である 」と結論づけた。本報告はInt J Clin Pract誌6月号(オンライン版5月11日号)に掲載された。」(CAERネットより)

ここでも薬剤師の介入が必要であることが見えてきます。
患者さんを不安にさせずに服薬を続けさせること。簡単なようで難しいです。決まった答えがあるわけではありません。
ある患者さんが薬を飲みたがらない・・・その理由はなんでしょうか。飲み込みにくいから、効きすぎて不安だから、もう良くなった気がするから?
一人ひとりの理由が違うのです。オーダーメイドの医療がなければなりません。そして根気よく患者さんと相談して決定することも必要でしょう。

知識とともに、根気のいる作業・・それが本来の服薬指導なんですね。

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