薬剤師を楽しもう!

境界値は複雑

我々が患者さんに聞かれることのうちで、一番多く、そして困ったことがあります。

「LDLコレステロールが130mg/dLなんだけど大丈夫だよね。」

ちょっと待ってね。あれ?高くない?うーーーん、でも・・・高LDLコレステロール血症って140mg/dL以上だったよねえ。

という反応の薬剤師さんがほとんどじゃないでしょうか。

悪いから、すぐに治療しなさい!!というほどではありません。でもこの値ならこのまま放置していても良いのかでしょうか。境界値の問題は、とても複雑です。
なぜなら、この言葉が40歳代で、特に動脈硬化家系でない方から聞いたものであれば、大丈夫じゃないかな、となりますが、60歳以上男性、近親者に動脈硬化があるならば、治療した方がいいような気がします。

何か良い目印になるものはないのかなーと探してみました。

「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」の2012年版の話題がありましたので、見てみます。

今回の改訂の主な点は
1:診断基準境界域の設置
2:初発予防における患者の層別化
3:新しい脂質管理目標値、non-HDLコレステロールの導入
4:再発予防における高リスク病態の明示
5:動脈硬化性疾患の包括的管理
の5点です。

LDLコレステロール値が120-139mg/dLの場合には境界域高LDLコレステロール血症として診断し、高リスク病態かどうかを検討する、というものです。
高リスクの患者さん、とは 糖尿病だったり、CKDだったり、脳梗塞があったり、家族に冠動脈疾患がいらしたり、高齢だったり、HDLコレステロールが低かったりする方です。
つまりは、動脈硬化になりやすい、動脈硬化を起こして血栓になりやすく、そのため脳卒中を起こしやすい。そういうかたが高リスクと位置づけられます。
境界値であっても、治療を行う方と行わない方が出てくるということです。

これが医療の本来の姿ですよね。
患者さんの実態にあわせた、オーダーメイド。

「あなたは、動脈硬化になるリスクが高いから、治療した方がいいんですよ。」とはっきり提案してあげられるようになりたいですね。

ちなみに「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」は5月末~6月初旬に発行される予定だそうです。高リスク者、低リスク者の区別やリスク管理チャートを見るだけでも、今後の仕事に役立ちそうですね。

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