薬剤師を楽しもう!

お薬手帳再考

2012年度の診療報酬改定についての情報がかなり出揃って来ました。
保険薬局に関してもいろいろと変更になります。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000021670-att/2r985200000216ve.pdf

今、我々の間で話題にのぼっているのは、「お薬手帳」のことです。
今回の改定で、お薬手帳は、患者さんに提供したら情報加算をするのではなく、薬剤服用歴管理指導料(以下歴管理料にさせてください^^;)の中に含まれることになったのです。

以前から「薬品情報提供文書」は見せて指導を行わなければならない、とありました。今回は「③ 調剤日、投薬に係る薬剤の名称、用法、用量、その他服用に際して注意すべき事項を手帳に記載すること。」という文言が追加されました。

これは大騒ぎになります^^;歴管理料は患者さんがどのように服薬ができているか、それが薬学的に正しいものであるか、を薬剤師が管理するための技術料でした。これに手帳の加算を包括するってどないやねん。手帳を渡さないといくらきちんと指導しても歴管理料は取れないということかしら?

しかし、私はちょっとだけ違った見方をしています。

今までの手帳加算、「薬剤情報提供料」の扱いを見てみましょう。
「1回の処方せん受付において、医療機関から処方された医薬品の説明を、当該患者の求めに応じて、いわゆる「お薬手帳」に記載した場合において算定される料金。」が薬剤情報提供料でした。
ここポイントです。「当該患者の求めに応じて・・・」
今回の改定では、「薬剤情報提供文書により、投薬する薬剤の情報を患者に提供し、薬剤の服用に関し、基本的な説明を行うこと。」と「調剤日、投薬に係る薬剤の名称、用法、用量、その他服用に際して注意すべき事項を手帳に記載すること。」があります。
患者の求めに応じて・・・ではないのです。

そもそも、歴管理料って結局は医療行政が「あんたたち、最低これくらいやりなさいよ。」という基準であると考えています。つまり、患者の意思とは別に「これからの医療行政的に「お薬手帳」は必要だから持たせなさい!」という行政からの指針が提示された、ということです。

なぜこうなったか?
災害時のお薬手帳の有用性が認められた結果だと思います。あの震災の時に、多くの患者、そして支援医師も、服用している薬が何であるかが分からなかった。多くの災害支援に赴いた薬剤師が「患者さんが飲んでいる薬は何だったか?」を確認する作業に従事しました。そして一定の評価を得ています。
こういった活動が社会的な評価を生み、それが今回の改定に及んでいるのではないでしょうか。
実は、大変誇らしいことです。
国から社会から、「お薬手帳」が認められたのです。それはみんなの地道な活動がベースにあるのです。

さて、この認められた「お薬手帳」を使ったら何ができますか?
退院時に「退院時薬剤情報管理指導料」という点数があります。持参薬管理+入院中に使用した主な薬剤の名称をお薬手帳に記載した上で退院後の薬剤服用に関する指導を行った場合に算定できる点数です。
もし、これを使えば、入院時の薬を手帳に記載、退院時指導を行う→外来にて保険薬局でその手帳を見る→入院時から退院後までの薬の経過がわかる。
まさにマイカルテ運動です。手帳を一冊持つことで、患者さんは薬に関するマイカルテを持つことができるのです。薬薬連携の形が見えてきます。
現在、日本の医療は「急性期医療」と「慢性期医療」に分かれてきています。普段は地域の医療機関で診察をしてもらって、いざというときに大きな病院に行く。そのつながりを確立するように行政は動いています。
お薬手帳はこのつながりをもっと自由にうまく動かせるようになるためのツールになるでしょう。

以前、ある急性期病院の薬剤師さんたちと、化学療法を行う際にお薬手帳を持参してもらえれば、そこに化学療法の内容を記載することができるのにね。というお話をしていました。化学療法にはどうしても副作用がつきものです。身近な保険薬局でその内容を把握していれば、それだけ早く副作用に対応することができます。
みんながお薬手帳を持つことになった。これによって、できること、患者さんに還元してあげられることは、大変増えます。というより、そういう立ち位置で考えなければいけない時代なんじゃないかしら。

あれこれ、面倒だなあ、と思わずに、その成り立ちや原点を見つめて仕事をしなければならない・・。そんな来年度になりそうです。

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