薬剤師を楽しもう!

実践派で行きましょう

9月になって、我が薬局にも薬学部の実習生さんたちがいらっしゃいました。
本音を言うとねー、やっぱり大変です。そりゃあ迎えるにあたって教えるためのマニュアルも作ったし、受け容れるために勉強もしました。でもやっぱり我々は本職の教師ではないので、すごくプレッシャーでした。

それでも、先日のこと。

新薬の説明を他のスタッフと実習生さんが一緒に受講。私は受けることができなかったので、ちょうどいいやと思い、実習生さんに「この薬、なんて説明あった?」っと教えていただくことにしました。

彼女はとても勉強している方で「薬物動態は苦手なんです・・」といいながら、的確にその薬の作用や特徴を私に伝えてくれました。
「へえ、よく分かったわあ。ありがとう。」とお礼を言い、もう一度その薬のパンフレットを見直しますと、何かおかしい。
「ねえ、今の説明はとてもよく分かったし、納得したんだけど・・その説明でいくと臨床では患者さんにこの病名で使うことが目的になるじゃない?でもこのパンフレットにそれがどのくらい効果があるのか?は書かれてないんじゃないのかなあ。」
「??」「だからね、この表にはこの病気がどのくらい治りました。って書かれてないのよ。」「あっ!!」
彼女は大きくうなずきます。

よくある薬のパンフレットに有意差が書かれた図が載っていますが、何の結果か?を見ると、薬の効果の有意差であって、病気が治ったかどうかの有意差ではないことがあります。例えば血圧を下げる効果は有意差があったけど、脳梗塞の予防にはならなかったとか。

我々薬剤師はつい薬の効果の強弱だけでその薬を評価しがちですが、薬は患者さんが服用して、その後期待した効果が出るかどうかが本来の評価の分かれ目です。
「そこを評価しないと、例えばACE阻害薬を腎臓の悪い方が服用する・・私血圧高くないのに何で薬を飲まなくちゃいけないの?って患者さんは不安に思っちゃうでしょ。薬の評価は薬剤師の大切なお仕事ですからねえ。」
「はい。本当に。」彼女はとても嬉しそうに返答をしてくれました。

「・・・私、今回が実習初めてなんです。でも来てよかったと思ってます。」
「ほう。」「本当は将来は学校に残ろうかなあ、って思ってたんです。でも、実習に来て今まで勉強した薬がこうやって使われていくんだ、というのを見せてもらえたら、こういうところで働きたいなあって、すごく思えました。」

そりゃあよかった。
じゃ、これからも薬剤師のお仕事を実践して見せてあげましょう。

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