入試シーズンも終わりを迎えました。果たして、各薬系大学の受験者の状況はどうだったのでしょうか?気になるところです。
私立薬系大学関係者の声に耳を傾けると「昨年に比べて受験者が1・3倍に増えた」「受験者の増加に伴って、薬学部の偏差値も上がりそうだ」などなど、景気のいい声がたくさん聞こえてきます。
地方に開設したがために、学生を集めるのに苦労し、定員割れが長年続いてきた薬学部新設大学でも「来年度は定員を充足できそうだ」との観測を耳にしました。
背景にあるのは相変わらず続く、新卒大学生の就職難。高校生やその親にとって、薬剤師という国家資格を得て確実な就職につながる薬学部への進学は、高い学費がネックにはなるとはいえ、確かに魅力的なのでしょう。
実際に、病院や薬局では薬剤師不足が続いており、薬剤師の需要は旺盛です。
薬学教育6年制への移行に伴って、新卒薬剤師の供給に2年間の空白が生まれたことに加え、当初見込まれたよりも、6年制を卒業した第1期生の数が少なかった(留年する学生が多かった)ことが、薬剤師の需要を高止まりさせている要因となっているようです。
これまで定員割れに苦しんできた薬学部や、定員割れにまで至らないにしても学力が低い入学者の増加に頭を悩ませてきた薬学部にとって、こうした状況は天の恵み。先行きに危惧を抱いていた私立大学薬学部の多くは、ホッと胸をなで下ろしているのではないでしょうか。
しかし、この状況がこのままいつまでも続くとは限りません。需要と供給のバランスが逆転する時期が、単に当初の見通しよりも数年延びただけなもかもしれません。
薬剤師の供給が需要を上回るXデーはいつ到来するのか。そして、その到来をいかにして防ぐのか。この課題は依然として残されたままです。
薬剤師の供給過多を防ぐ最も確実な方法は、供給を減らす、つまり薬系大学の数を減らすことです。とはいえ、これでは元も子もありません。
やはり、薬剤師の需要をどんどん掘り起こしていくことが、目指すべき方向性でしょう。その実現には、社会で働く薬剤師が、自分達の職域を拡充していく必要があります。
これぞ正攻法といえるもので、この点において、薬系大学と現場の薬剤師の利害は完全に一致します。しかし、両者の連携はまだ十分とはいえませんし、薬学部教員の足並みが揃っているとも思えません。薬剤師の将来のため、薬系大学の将来のためにも、薬剤師の職域拡大を目指して両者は一致団結し、今以上に力を尽くすべきではないでしょうか。