薬剤師を楽しもう!

もやもや病

ずっと前、歌手の徳永英明さんがこのもやもや病に罹患したのがきっかけで
一般にも知られるようになりました。
見事に復活されて、今ではあの甘い歌声に癒されている人がどれほど多くいることか。

(←私もその一人☆)

「もやもや病」の名前の由来は脳の細い血管が増えて、レントゲンで脳をとると、
たばこの煙みたいに「もやもや」した状態だからです。

まずは脳の中身から。
脳に栄養を与える太い血管は4本あります。
これら4本は頭の中でお互いにつながっていて、輪のように見えるので
発見した人の名前から『ウィリス動脈輪』と呼ばれています。
とっても大切な役目をする血管なので、もし1本が詰まっても他の血管から流れるように
繋がっているのですね。
「もやもや病」の正式名は「ウィリス動脈輪閉塞症」です。

この太い血管が細くなったり詰まったりすると、血流量が減り、もちろんそれがひどい場合は
脳梗塞がおこるのですが、脳もがんばります。
太い血管が役目を十分に果たせないとわかったら、そこから繋がっている細い血管が
一生懸命細いなりに代わりを務めようと広がったり
ほとんど使っていなくて見えないくらいの血管まで頑張って血流量を増やします。
脳血管なりの自衛策です。
そんなこんなで、どんどん無秩序に入り組んだ状態で細い血管の血流量が増えるので
もやもやとした状態になります。

欧米人よりアジア人のほうが多く10倍くらい、女性が男性の1.8倍くらい、
日本全国で約7500人いるといわれています。
発症年令は5歳前後を中心とした小児型と、30~40代を中心とした成人型です。
約10%の患者さんに家族例が見られるので、遺伝的要素もあります。

症状は2つにわかれて
脳に血流が足りないために起こる脳虚血型と
細い血管に負担がかかりすぎて出血する脳出血型があります。

脳虚血型の特徴は笛を吹いたり、熱いラーメンをふうふうしながら食べたり
全力疾走をしたり、子供だったら大泣きをしたり等など、過呼吸運動によって、手足がしびれたり、
脱力したり、意識障害が起こったりします。
数分でおさまる場合もあれば、脳梗塞になる場合もあります。
でも、子供の場合は気をつけなければいけませんね、大きな症状だったらわかりますが、
少しの手足の脱力など、症状を訴えない場合も多いので見逃してしまいます。

虚血している場所によっては一時的にものが歪んで見えたり、視野の一部が欠けたり,
見えにくくなったりする場合もあります。
脳血流改善薬や抗血小板薬で血がかたまって血管が詰まるのを防ぎます。
抗てんかん薬を用いることもあります。
虚血がひどい場合はバイパス手術を行います。


脳出血型は出血部位によって症状は違いますが、頭痛や、部位によっては麻痺が起こります。
日常の特徴は起床時から午前中にかけて吐き気やおう吐を伴う強い頭痛があって、
昼までにはおさまって午後は改善、というのが典型的パターンです。
この場合痙攣を止める薬が有効な場合があります。
出血は繰り返すことが多く、それを完全に止める有効な治療はありませんが
血腫を取り除いたり、バイパス手術によって再出血を予防することができるのでは?
といわれています。
もともと高血圧の場合は付加がかかるので抗圧剤を投与します。

頭痛に対する、薬が問題です。
他の鎮痛剤が効かないため、片頭痛?と思って、イミグラン等を投与すると・・・・
イミグランやゾーミックの添付文書の投与禁忌には
『脳血管障害や一過性脳虚血発作の既往のある患者』とあります。
これはもやもや病の状態なので投与は避けるべきです。


もやもや病無症状で見つかる場合も増えてきています。
偶然頭のレントゲンを撮った時に見つかるとか。
進行があまりなければ無治療で様子をみることもあります。

日頃気を付けることは『脱水』
脱水状態になると血が固まりやすくなります。
運動時の水分補給は注意して積極的にとるように、
発汗を促すサウナなどもさけたほうがいいですね。

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