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ワクチンあれこれ

新型インフルエンザの流行で一躍脚光を浴びた「肺炎球菌ワクチン」
高齢者のインフルエンザの合併症で肺炎を起こすことを予防するために
とマスコミで報道が沢山あったので、問い合わせも多くなりました。
肺炎球菌ワクチンの必要性はもちろん高齢者の死亡原因になっていることですが
もしかかってしまっても軽症ですんだり、ペニシリン等に耐性の肺炎球菌にも
効果があることが挙げられます。

しかし、「肺炎球菌ワクチン」が一般には「肺炎ワクチン」と誤解され
全ての肺炎に効く(肺炎球菌が原因じゃないのでも)とか
もう打ったから肺炎には絶対かからない、とか
思ってしまう患者さんも多いです。
ここのところは薬剤師としても、正確な情報を提供しなければいけません。

もともと肺炎球菌は80種類以上の型がありますが、
肺炎球菌ワクチン・ニューモバックス(万有製薬)は、
そのうち感染機会の多い23種類の型に対して免疫をつけることができます。
この23種類で全ての肺炎球菌による感染症の8割を占めます。
1度打つと接種後1カ月で最高値、その後4年間はあまり低下せず、
5年後にはピークの8割に低下します。
これが、「肺炎球菌ワクチンは5年有効」という話のもとですが
5年で0ではないので、正確には「5年以上」です。
ずっと、1度打てば1生打てないと言われていました。
これは、特に5年以内に再接種すると副反応が強くでたりするので
日本では認可されていませんでしたが
2009年10月の厚労省の検討会で
再接種のベネフィットが注射部位反応発現等のリスクを上回ると考える場合には
差支えないとされ、添付文書が改訂になりました。

保険が効くのは「脾臓摘出者」のみ。あとは自費なので6千円~9千円位が相場です。
自治体によっては補助を出しているところもあるのでご確認ください。

そしてもう一つ最近認可されたワクチン
「子宮頚癌ワクチン」のサーバリックス(グラクソ)です。
今年の10月に承認され、12月22日から接種可能になりました。
子宮頚癌の原因ははっきりしていて、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染です。
HPVには100種類以上もの種類がありますが
子宮頚癌の原因として多く報告されているのが16型と18型で
この型に対応するワクチンです。
これはすでに感染しているHPVを排除するわけではないので
感染前に早く打つことが必要で、
海外ではなんと小学生に打つそうです。(・・・・はるか昔の私・・・)
日本でも接種対象者は10歳以上です。

感染してすぐ発病するわけではなく大半は2年以内に自然消滅し細胞が正常化します。
感染も特別なことでなく女性の約80%は一生に一度は感染するらしいです。
ただ約10%の人で感染が長期化しますが、ここで全てが癌化するわけではなく
そこから数年~十数年ほどだって子宮頚癌に進行するのは感染者の1%以下。
WHOの年間罹患患者推定では30000万人発がん性HPV患者のうち
子宮頚癌に進行するのは約45万人(0.15%)です。
じゃあ、おたふくや水疱瘡みたいに感染によって自然免疫がつくのでは?
と思いますが、自然感染では十分な免疫がつきません。
1回の接種では十分な抗体ができないので半年に3回打ちます。
これで最長で6.4年間は上記の2つの型に対しては前癌病変を100%予防する効果があるそうです。
でもその後、どれほど持続するのか、追加接種が必要なのかはまだ分かっていない状態です。
そして、こちらも自費。
1本12000円~15000円位で×3本分です。
しかし、接種していても、別の型の感染は防げないのでやはり定期健診が必要でしょう。
ちなみに、4つの型に対するワクチンはただ今申請中だそうです。

思春期の女の子は「子宮頚癌ワクチン」という言葉に抵抗のあるかもしれませんので
早く保険適応、海外のように小学生での学校での集団接種となるように体制がととのえられたらいいですね。

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