「百日咳」→乳幼児→凄い咳→重症化→でもワクチンが有効→感染者は減少
昔はこのようなイメージでした。
ところが今は?
「百日咳」→ん?大人?→なんだか咳が続くなあ~→おっと、集団発生!→ワクチン打ってるのに・・・・・・なんで?
忘れかけていた百日咳が某大学で集団発生したのは2007年春のこと。それからちまたで成人の集団発生が報告され、国立感染症研究所によると、2008年1~4月の感染総数のうち20歳以上は40%、これは2000年の調査の2%から比べると凄い増加率です。
おまけに2009年は大流行するのでは?とも言われています。
あらためて「百日咳」について。
病原体は、そのまんまの「百日咳菌」。飛沫及び接触で感染し感染力は麻疹についで強いです。
経過ですが、まずは潜伏期。6~10日位。
それからカタル期、ここでは普通のかぜの症状が2週間程度。
そして痙咳期、ここで百日咳の特徴的な咳が2~3週間続きます。
連続的な短い咳の発作(スタッカート)、息を吸い込む時ヒューと笛のように高い音がでる(ウープ)これらの繰り返しをレプリーゼといいます。
夜間の発作が多いですが、熱もないため非発作時は正常です。
こんなに特徴的な咳ならばすぐわかるハズですが、乳幼児早期ではもともと呼吸の力が弱いので、そこまで特徴的な咳でなくヒューという音も発しない場合があるので、無呼吸やチアノーゼ、けいれん、最悪の場合呼吸停止に至ることがあります。
最後に回復期は発作が減ってきて2~3週間でほとんどなくなりますが、2、3か月はときどき咳がでます。
確かに乳幼児期にうけるワクチンは効果が高いのですが、年月がたつと効果が薄れてくるといわれています。そのうえワクチン接種者や成人では百日咳特有の音の咳発作が見られない場合があり、ただ咳が長引く、夜中の咳が多い・・・というような症状なので、知らず知らずのうちに菌をばらまいてしまう結果になります。
それに百日咳の感染力ですが、特徴的な咳の痙咳期ではなく、普通のかぜ症状のカタル期が1番強いというのも感染を広める原因です。
特に乳児は母体からの免疫が1~2か月で消失してしまうので、早期に感染してしまいます。
お薬はマクロライド系が第一選択です。
よく使用されるのがエリスロマイシン、40~50mg/kg/日の2週間連続投与。
カタル期に服用すれば痙咳期まで進まないこともあり、痙咳期で服用すれば発作の咳に対する作用は弱くても除菌作用があるので服用意義はあり、服用後5日位で菌は陰性になります。
百日咳患者が周りにいるときも予防投与で2週間服用します。前述の集団発生の某大学も集団発生後に非感染の学生や教職員多数が予防投与をされました。
大人の場合重症化することは稀ですが、1番怖いのは「風邪こじらせたのかな~咳が続くな~ 、そういえばもう一か月になる、でも忙しくて病院行く暇ないし。」なんて大人がワクチンをまだ打っていない乳幼児に感染させてしまうことです、小さければ脳症で死亡してしまう場合もあります。
これを防ぐためにも、乳児はいち早くワクチンを打つこと(生後3か月から)、大人は長引く咳には要注意、特に気がつけば周りにも咳ゲホゲホしている人が多いという場合は怪しい・・・・・。
あと、欧米なんかは思春期にもう一回ワクチンを打つことになっているので、日本もこれからの動向次第でそうなるかもしれませんね。
たかが咳、されど咳、のお話でした。