なんだか、かわいいネーミング。
世界初「選択的アルドステロンブロッカー」の降圧剤「セララ」が発売されました。
アルドステロンと言えば、レニン・アンジオテンシン系の最後の物質(アンジオテンシンⅡの次)ですが、じゃあARBでいいんじゃないの?となりますが、非レニン・アンジオテンシン系からもアルドステロンに到着するので、アルドステロンを抑えることが必要になってきます。
アルドステロンは食塩過剰摂取下では高血圧だけでなく、心臓・血管・脳・腎臓等の臓器障害にも深く関与しているということです。
ここで「食塩過剰」という条件がなぜつくか、その証明話。
マサイ族という民族は遺伝的に高アルドステロン症ですが、高血圧も心血管イベントも少ない、何故かと言うと、食塩摂取が3g/日だとか。このことから食塩過剰摂取によるバランスの崩れがおこっている時にアルドステロンの有害作用が出てくることがわかります。
日本は韓国に続き世界2番目の食塩摂取国で11~12g/日、ですからアルドステロンを抑えることが高血圧、心血管イベントなどにとって重要になってきます。
では、大昔からあるアルドステロン拮抗薬のスピノロラクトン(アルダクトンA)とどのように違うかですが、アルダクトンはアルドステロンの受容体だけでなく、性ホルモン受容体にもくっつくので、女性化乳房・月経障害・勃起機能不全等の副作用(発現率10%ほど)が難点でしたが、セララはアルダクトンの8倍ものアルドステロン受容体選択性(in vitro)がある為、前述のような副作用が少ないので(発現率1%以下)使いやすいという事です。
さて、この「セララ」の適応症は高血圧ですが、単独使用よりはCa拮抗薬やβブロッカーなど他剤にオンするのが主流とか。それじゃ別にセララじゃなくてもいいんじゃないの?と思いますがここからがセララの「ウリ」の部分。
心筋梗塞後の標準治療による影響をみた2003年のEPHESUS STUDY(N=6632例)によるとACE阻害剤、ARB、βブロッカー等で単剤または多剤で標準治療している患者にセララを25~50mgオンすることで36ヶ月後の総死亡率が15%低下したそうです。
比較としてセララをオンせずに、代わりにバルサルタン(ディオバン)を80mg使用したVALIANT STUDY(N=14703例)では総死亡率に有意差はなかったとの事。このことからも高血圧で心保護の必要な患者にはセララの低用量で予後改善を目的とした使用が推奨されます。
じゃあ、心不全とかで適応とればいいのに、と思いますが新規で承認時に心不全で適応をとると薬価が跳ね上がるそうです。
海外59カ国で発売されていますが、ほとんどが心不全で適応をとり日本と米国だけが高血圧症の適応だそうです。もちろんあとから効能追加を考えてるそうですが。
副作用ですが、国内および海外の臨床試験によるデーターでは頭痛が6.1%と比較的多かったですね。あとやはり作用上高カリウム血症をきたすので併用禁忌にカリウム製剤およびカリウム保持利尿薬、併用注意にACE阻害剤とARBがあります。