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骨の薬が骨壊死の原因?

「えっ、何で?」と思いました。

すべてのビスフォスフォネート系薬剤の添付文書に「薬剤の投与により顎骨壊死、顎骨骨髄炎があらわれることがある」と記載されています。

何のこっちゃ・・・・と???でしたが、文献を読む機会がありました。

まず顎骨壊死とは、顎骨への血流供給不足及び感染、治癒機能低下等により歯の根元の骨が欠損または壊れてしまうことです。
これが、現在多く使われているBP系薬剤の投与をうけている患者、特に多発性骨髄腫や乳癌・前立腺癌の骨転移などによる高カルシウム血症に対して静脈内投与された患者に発生しているとか。

BP製剤が顎骨壊死を誘発するメカニズムはまだはっきりとは解明されていませんが
リスク因子はいくつか報告されています。

・ステロイド治療中
・悪性腫瘍の治療として抗がん剤、放射線治療中
・歯周病など口内不衛生状態
・歯科処置(特に抜歯)による外科的襲来
・感染リスクが増加する免疫機能低下状態
等です。

各国で様々なBP製剤と顎骨壊死との関係の報告がなされていますが注射製剤(アレディア・ゾメタ)を販売しているノバルティスファーマ社の発表によるとこの製品が発売されて以来2002年12月から2006年4月までの間に顎骨壊死等の顎の病変は2538例報告されており原疾患別では多発性骨髄腫786例(31%)乳癌404例(15.9%)となっています。

国内では2006年2月時点でアレディアのみ13例報告されています。
詳しい症例概要がHPに記載されていますので、参考までにご覧になってみてください。

歯科領域のガイドラインによると、抜歯などが誘発原因になる為

・BP製剤治療を受ける前に歯科的治療を済ませておく。
・抜歯前にBP製剤を休薬する。
・含嗽剤によって口腔内を清潔に保つ。
・口腔内細菌に有効である抗生剤の投与、などがあります。

休薬に関しては、BP剤は骨内に長期間沈着するので短期間の休薬の必要性があるのか?
と思いますが、血管新生への影響など休薬による効果も期待できるので休薬に関しても使用年数などでガイドラインがあります。

ほとんどが注射剤での報告ですが、経口剤でも報告されています。

歯科的治療の前には十分な注意が必要と歯科医師間ではこの病変とBP剤との関連に関しては注意されています。実際、歯科医師から「ビスフォスフォネートを服用していないか」と問う場合や、説明用紙を用意してインフォームドコンセントをきっちりしている歯科医院もあります。

骨密度を上げるには本当にいい製剤で、これからも使用頻度が増えると思われる薬剤ですので、この件に関しても注目したいですが、経口剤の発症頻度は極めて少なくエビデンスの少ないまま情報が錯綜している面もあるので、患者さんに過度の不安は与えたくありません。

いまの段階では薬剤師としては一通りの知識と初期症状を把握していることが必要かと思います。
顎骨壊死の初期症状は疼痛・腫脹・しびれ感・顎が重たい感じ等です。

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