薬剤師を楽しもう!

薬害に少しでも立ち向かおう

内輪ネタですが、私の母の話です。

60歳を過ぎたころから、三叉神経痛を患っており、治療のために、「テグレトール」を服用していました。「この薬を飲むと眠い」程度の副作用しか出ず、特に問題はおこっていませんでした。ところが、数年服用していた後、ある日湿疹がでて全身に広がりました。原因が分からず、それで湿疹の治療のために一時入院し、服用のテグレトールを中止したところ、湿疹が徐々にひいてきたのです。
「断定はできないけれども、テグレトールによる薬疹の可能性が高いね。」
皮膚科のドクターはそうおっしゃっていました。

そして、それから数年たった先日。母から電話がありました。
「なんだかね、湿疹がでてきて・・・。神経痛も痛いし、ほんと困っちゃうんだよ。・・・薬変えてもらったのに。」
「神経痛の薬変えたの?何に?」
「・・・・・あんまり痛いからね。先生が「少しから始めましょうか」って「テグレトール」を処方してくれたのよ。」
「おかーさん!!それの薬疹じゃないの!?」「やっぱりそうかなあ。。。明日皮膚科に行ってくるよ。」

結局、母は咽頭内部までかゆみが出てきたため、すぐ入院になり、現在ステロイド持続点滴を行っています。幸い治療開始も早かったため、ずいぶん赤みもひいてきました。

患者さんってそんなものなんだなあ。と改めて実感しました。


母は薬疹のため一度入院しているのです。それなのに、ドクターが「少しずつ(なら大丈夫だろう)から始めてみましょうか」の一言で、その薬疹の出て苦しんだことのある薬を躊躇せずに服用してしまうのです。

院外処方箋を出している病院ですから、保険院外薬局にて薬は受け取っています。その際にも何かやりとりはあったのでしょうか。おそらく「ドクターから少量からはじめましょう。と言われた」と患者さんに言われたら、薬剤師の立場としてそれ以上は何ともしがたかったのかもしれません。また自分自身でもそういう患者さんがみえたら、「少量なら・・」と納得して調剤すると思います。

こういった薬害を出さないために、もし出ても軽傷ですませるために、私たちは何をしたら良いのでしょうか。少なくとも警鐘を発することはできるでしょう。
テグレトールは、その吸収の個人差が大変大きい薬剤で、最高血中濃度への到達も1日以上かかる可能性もあります。定常状態になるまでには3ー4日かかるでしょう。
こういったことを踏まえて、3ー4日は薬疹の出る可能性があるため、気をつけながら服用すること。3ー4日内に、例えば旅行など日常と違うことを行う場合は、服用開始時期を医師と相談するように提案してみるのはどうでしょうか。

少しの警鐘を鳴らすこと、これがもしかすると大きな命を救うかもしれない。
薬剤師って、そういう立場の仕事をしているんだな。と改めて感じられました。

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