薬剤師を楽しもう!

トラムセット

弱オピオイド(トラマドール塩酸塩)とアセトアミノフェンの合剤、
トラムセット配合錠が発売されて半年ちょっと経ちました。

降圧剤の合剤は当たり前ながら、このバージョンがくるとは、
発売されると聞いた時はびっくりしました。
海外ではよく使われているのですが。

組んだ理由は
トラマドールの立ちあがりが遅いので、その薬剤に立ちあがりの早いアセトアミノフェンを加えたようです。

確かにNSAIDsで効果がさほどなく、慢性疼痛に苦しんでおられる患者さんは沢山います。
錠数を増やしたり、種類を変えても変わりなく。
リリカが発売されてから、帯状疱疹後神経痛がかなり緩和されるようになりましたが、
こちらも効果があるということで
帯状疱疹後疼痛をお持ちの方は今までのように痛みに耐える必要がなくなるかもしれません。

「朗報!」と思いながらも、副作用や依存性のことがすぐ頭をよぎました。

効能効果は
非オピオイド鎮痛剤で治療困難な鎮痛(非がん性慢性疼痛・抜糸後の疼痛)

慢性疼痛は
「治療に必要とされる期間を超えているにもかかわらず持続する痛み」と定義されており
痛みの持続期間は3カ月以上とされています。

オピオイド製剤なので、使用に当たり、沢山の『壁』があります。

まず、患者の痛みが慢性疼痛かどうか、
オピオイドの治療対称ではない非器質性(心因性)疼痛でないかどうか、
を問診しなければいけません。
痛みは複合的なので
炎症的疼痛(腰痛・変形性関節症等)と神経的疼痛(帯状疱疹後疼痛等)との兼ね合いも考えて総合的な診断が必要です。

そして副作用の面からも、患者との信頼関係構築、
認知症など服薬への懸念のある患者はサポートがなければ服薬困難者となります。

依存リスクが高いのも非適応。
アルコール依存や精神疾患の併発なども専門家の判断が必要となってきます。

そんな『壁』を乗り越えて、やっと適応症例となります。
あ~~長い道のり。

副作用はもちろん、かなりの頻度で悪心(41.4%)・嘔吐(26.2%)が出現します
                     ~国内臨床試験599例中~

ところが、これはもちろん初日・2日目に多くでて、3日目以降はガクンと数%に下がるのです。
ですから、服薬指導時初期の副作用であることをきちんと伝えないと
コンプライアンス不良どころか、
服薬拒否『もう一生飲まへんわ! By関西人』になる可能性は高く、
せっかく疼痛緩和の目的が果たせないことになります。

実際当薬局で処方された患者さん。
「あ~気持ち悪っ~~~気持ち悪いがな~~~」と2.、3日ぶつぶつ言いながらも
今では全く悪心はありません。

ナウゼリン・プリンペランの投与初期からの併用や
漸増投与ですね。
推奨モデルは
分1 を1~3日まで
分2を4~7日まで
それ以降が分3

もしくは
1週間目  朝 NSAIDs(以下N)  昼 N  眠前 トラムセット  
2週間目  朝 トラムセット    昼 N  眠前 トラムセット  
3週間目~ 分3トラムセット

という方法もあり。


でもですね~~~。
適応の抜糸後の疼痛!
初日が痛いのに、それとともに気分も悪いなんて、なんだかな~~~、と思いましたが
骨切除などを伴う侵襲性の高い手術の場合はNSAIDsが効かないこともあり
この効能を取ったみたいです。

がん性疼痛に適応取らなかったのは、すみ分けの意図的なものでしょう。


『痛みを除く』というのはQOLに関してはとても大切なことなので
ともかく、服薬指導は患者の立場に立って適切にする必要がある薬剤です。

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